『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
一九六九年の元日、ジョージ・ハリスンが数週間ぶりにアップルに姿をあらわした。彼はやる気満々だった。ディランと数日過ごしたおかげで創造力に火をつけられ、しかもふたりの美女──妻のパティと、フランス人のモデルで、友人のエリック・クラプトンと別れたばかりのシャルロット・マーティン──と一緒に暮らすというスリルを味わってもいたからだ。「彼女はいつもジョージにちょっかいを出していました」とパティはふり返っている。「そして彼ももちろん、それを歓迎していたんです」
彼はデレク・テイラーと話しこみ、テイラーはふたりで、この会社での毎日をテーマにしたミュージカルを書いてみないかと提案した。「このオフィスはしょっちゅう『不思議の国のアリス』さながらになってしまう」とテイラーは、その一週間後にコメントしている。