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ザ・ビートルズ 解散の真実
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フィル・スペクターの起用

『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット [訳]奥田祐士 [発行]イースト・プレス


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 ミーティングが開かれたのは、レノンとハリスンがアビイ・ロードでレコーディング・セッションを終えた数時間後のことだった──ただしビートルズではなく、プラスティック・オノ・バンドのセッションを。前日、でき上がった曲とともに目を覚ましたレノンは、その曲に〈インスタント・カーマ(Instant Karma)〉というタイトルをつけた。いつものように我慢を知らない彼は、すぐさまそれをレコーディングし、リリースしたいと考えた。


 レノンはロンドンでフィル・スペクターと最初のソロ・アルバムの打ち合わせをしていたジョージ・ハリスンに連絡を取った。「それでフィルを『セッションに来ないか?』と誘ったんだ」とハリスンはふり返っている。スペクターは彼らしいエネルギーで、曲の雰囲気を一変させた。不吉なピアノと鞭打つようなドラムに乗せて、スターダムの矛盾を暴き出すレノンの歌声に、ピリピリとした緊張感をもたらしたのだ。


 レノンは狂喜した。スペクターはほんの数分で、ビートルズがかつて成し遂げたことのないほど熱っぽい、ほとんど息が詰まりそうなサウンドを作り上げたのである。このプロデューサーはむらっ気で、しばしば癇癪を爆発させることでも知られていたが、レノンはすっかり彼の虜になっていた。彼はクラインに、自分のアルバムもハリスンの次のアルバムと同様、スペクターにプロデュースを依頼したいと告げた。そして「フィルに『レット・イット・ビー』のテープを聞かせてみたらいいんじゃないか?」とつけ加えた。


 この決定にはビートルズの四人全員の承認が必要とされたが、マッカートニーは何週間か消息不明だった。彼はようやくレノンの言葉を、額面通りに受け取る決意を固めていた。ビートルズは終わったのだ。「そういうことなら、シャキッとしなきゃ駄目だ、と考えはじめてね」と彼は回想している。「ジョンにその場の仕切りを任せ、ガールフレンドを捨てるみたいな感じで、ぼくらをお払い箱にさせるわけにはいかなかった」


 彼は外界に対する扉を閉ざし、だれも自分の判断に異を唱えない環境で作業を進めた。最初のソロ・アルバムはホーム・スタジオでかたちになり、その後、彼はロンドン北西部のモーガン・スタジオに入った。ロンドンのレコーディング業界では、さほど名の通っていないスタジオである。それでも彼はすべてのセッションをビリー・マーティンという偽名でブッキングし、二月に入ってようやく、自宅から近所のアビイ・ロード・スタジオまで散歩する勇気が持てるようになってからも、その計略を用いつづけた。


 マッカートニーは結局、フィル・スペクターに関する数々の問い合わせに回答した。サウンドトラック・アルバムが必要なのははっきりしていたが、マッカートニーはおそらく、すでにレノンと仕事をし、まもなくハリスンのプロデュースも手がける予定になっている男が、果たして自分の楽曲を公平に遇してくれるだろうか、と不安に思っていたに違いない。最終的に彼は、ほかの三人と同じ条件をつけて合意した──アルバムがリリースされるのは、メンバー全員がスペクターの作業を承認した場合に限られる。


 その間にマッカートニーは自分のレコードを完成させた。実体には乏しいが、それでもチャーミングな断片のコラージュで、ビートルズが一九六九年の一月にやったセッションのボツ曲やインストゥルメンタル、それに〈エヴリ・ナイト(Every Night)〉と〈恋することのもどかしさ(Maybe I'm Amazed)〉という、忘れがたい美しさを持つラヴ・ソングが二曲含まれていた。


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