『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
フィル・スペクターから《レット・イット・ビー》のアセテート盤を受け取ったとき、ポール・マッカートニーは渋々ながらそのリリースに同意していた。そして今、ビートルズの解散をめぐる騒ぎを耳に詰めこんだ状態で、彼は傷をなめつづける犬のように、このアルバムを何度も聞き返した。大仰なアレンジで本来の意図がかき消されてしまった〈ロング・アンド・ワインディング・ロード〉を聞いていると、彼は次第にたまらなくなってきた。
もはやビートルズの仲間たちに気を遣う必要はない。今こそ、真実がものを言う時だ。しかしその自己正当化は、彼に致命的なダメージを与えた。