『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
いずれにせよ、彼がもっとも話を聞いてほしかった相手は、散り散りになっていた。リチャード・スターキーとの関係は、三月三一日の対決によって損なわれていた。ジョン・レノンとヨーコ・オノは原初療法三昧の夏を送るために、四月末にロンドンからロスアンジェルスに向かい、その間は実質的に、アップルやビートルズやその従者たちの議論とは縁を切っていた。ハリスンもボブ・ディランと仕事をともにするつもりで、同じ飛行機に乗った。
出発の直前に、マッカートニーからヘンリーにいたハリスンのもとに電話が入り、彼の回想によると「フン族のアッチラみたいな勢いで怒鳴りつけてきた。思わず受話器を耳から離してしまったよ」。またしてもマッカートニーは感情に負けて、自分の判断を揺るがせてしまったのだ。