『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
マッカートニーの場合はむしろ、窒息しそうな気分だった。「死にそうだったよ」と彼はふり返っている。「夢を見てね。皮下注射器を持ったクラインが、発狂した歯科医みたいにぼくを追いかけ回してる夢を。信じられない」。しかし昼間の現実に比べると、夜の夢などものの数にも入らなかった。「ありえなかった」と彼は一九八四年に認めている。「よくあのころのぼくと暮らしてくれる人がいたもんだと思うよ。人生ではじめて、ぼくは自分の目で見ても、ボロボロになっていた」
彼は一五の歳以来、ジョン・レノンの友人であり、共作者であり、パートナーであり、腹心だった。一八の歳からは、ずっとビートルズのメンバーだった。