『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
こうした商業的な成功も、クラインの帝国が危うい位置にあるという事実を覆い隠すことはできなかった。彼がアップルに到着したのは、この会社が利益を出していなくても、まだ理想主義に則って、勢いよく前進していた時期のことだった。「外の世界から来ると、アップルは度肝を抜かれるような場所だった」と広報担当のデレク・テイラーは、その二〇年後にコメントしている。「部屋はひとつひとつ違っていて、どの部屋もありきたりじゃなかったし、だれも見たことがないようなものだった。しかも全部がさりげなくて、見せびらかすような気持ちはさらさらなかった。