『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
アルバムの発売は、この騒ぎにケリがつくまで延期されるかに見えた。だが攻める側も攻められる側もすぐに、そんな真似をしたら損をするだけだと気づいたため、予定通り発売された。派手さのなかったデビュー・アルバムと異なり、《ラム》はビートルズの消滅以降も、マッカートニーの曲作りの才がいっさい衰えていないことを証明する作品だった。きらびやかなオーケストラを配し、長年、彼のトレードマークとなってきた遊び心あふれる活気を前面に出したアルバムは、たっぷりと楽しめる作品で、ポップ・アレンジの極致とも言うべきミニ組曲(〈バック・シート〔The Back Seat of My Car〕〉)でクライマックスを迎える。けれども感情的な誠実さをたたえたレノンやハリスンの作品に比べると、《ラム》は軽量級で中身がない、無意味な作品という印象を与えた。
レノンの最初の反応は、「なんてこった、こいつはひどすぎる。もう一枚のアルバムのほうが、ある意味、全体的に出来はよかったと思う。