『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
マッカートニーが過去の偉業と比較されることを嫌がった背景には、彼の最新プロジェクトがはらむ危うさがあった。〈アイルランドに平和を〉をレコーディングした一月の時点で、ウィングスは五人組になっていた。ラジオ局がオンエアを拒否したおかげで──トップ40のカウントダウン番組でも、BBCは「ウィングスのレコード」と、遠回しに触れるだけだった──短期間とはいえマッカートニーは、それまでずっとレノンが独占していた物議をかもすアーティストの座につくことができた。
二月のはじめにマッカートニーは、一九六九年にほかのビートルたちからはねつけられた夢を実現する。