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ザ・ビートルズ 解散の真実
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裏切りのにおい

『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット [訳]奥田祐士 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:5分
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 一九七三年四月二日、アレン・クラインはブロードウェイのオフィスから声明を発表した。「今やアップル・コア社とハリスン、レノン、スターキー各氏のマネジメント継続を申し出るのは、ABKCO社にとって、最大の利益とはならないと考えられる。こうした状況を鑑み、ABKCOはアップル・コア社獲得に関するこころみをすべて取りやめた。われわれはハリスン、レノン、スターキーが今後も成功を収めつづけることを願っている」


 この慎重に言葉を選んだ文章によって、クラインはもう、ビートルズの実権を握るつもりがないことを明らかにした。もはや離婚は避けがたかったものの、それを見苦しくないかたちで実行に移す余地は残されていた。


 イニシアティヴを取ったのはクラインで、その決断を下したのは、もっぱら彼の側だったような印象を与えた。彼のかつてのクライアントたちは異を唱えた。その朝、国境のない想像の国、ヌートピアの建国を発表する記者会見を開いたジョン・レノンとヨーコ・オノは、自分たちをヌートピアの国連大使に任命し、ニューヨークに亡命を求めていた。それは米国移民局を出し抜こうとする、最後の絶望的なこころみであると同時に、政治活動家としての自分たちに対する、象徴的な訣別でもあった。ヌートピアの公式なシンボルが降伏をあらわす白旗だったのは、大いに意味のあることだったのである。


 アレン・クラインがもはや彼のマネージャーではないというのは本当か、とレノンは質問された。「オレたちはあいつと切れた」と彼は認めた。なぜ?「なぜだと思う?」と彼は反問した。「その件については次の時に話そう」。その後、レノンはほんの少しだけ率直になった。


オレたちが結局あいつをクビにした理由はいろいろあるが、詳しい話はしたくない。とりあえず、ポールの疑念は正しかったのかもしれないし、タイミングもちょうど合っていた、と言っておこう……正直、こういう状況にはずいぶん前から不満を持っていたんだが、ことを急ぎたくなかったんだ。もしかしたら、なにかうまい手が見つかる可能性もあったからね。



 この曖昧なコメントは、真実を覆い隠していた。レノン、ハリスン、スターキーは、クラインと縁を切る方法について、数か月前から法律上のアドヴァイスを受けていたのだ。クラインも間違いなく、裏切りのにおいをかぎつけていた。というのもすでに会計士たちに、彼の統治下におけるビートルズの会社の詳細な損益報告書を用意するように指示していたのである。


 二月の終わりに彼は、ニューヨークでリチャード・スターキーとジョージ・ハリスンに自分の言い分を述べ立てた。ビートルズはEMI/キャピトルに対する義務を果たせなくなる危険がある、と警告し、そこでアップルのアメリカ支社長、アラン・ステックラーに、ビートルズのもっとも愛されている楽曲を集めた編集盤を二セット取りまとめるように依頼した、と伝えたのだ。


 クラインはまたスターキーに、三人のビートルとアップルはまだ、多額のマネジメント手数料をABKCOに支払っていない、とあらためて指摘した。ABKCOは間違いなく支払いを受けると、彼に保証できるのか? スターキーは躊躇せず、自分たちはつねに契約の条件を守るつもりだ、と答えた。だが彼もすでに知っていたように、その契約は潰える定めにあった。アップルはマネジメント契約をさらに二週間、そしてまたさらに二週間更新し、ビートルズ・グループ・オブ・カンパニーズのマネージャーとしてのクラインの統治は、一九七三年三月三一日をもって終結した。


 契約に署名した三人のビートルの中で、クラインを拒絶する理由がもっとも少なかったのはスターキーだった。彼は一九七一年にこのアメリカ人について、「ほかのみんながどう言おうと、彼はフェアな男だ」と語っている。「人を裏切るなんて真似はしない」。ビートルズ解散後のスターキーが危うい立場にあることを認知していたクラインは、俳優としての道を進むように彼をうながし、ドラマーが主演した西部劇『盲目ガンマン(Blindman)』にも出資していた


 スターキーは一五万ドルのギャラを約束され、ハリウッドでもトップクラスの稼ぎ手となった。だが忠誠心をどう配分するにせよ、スターキーはつねに外部の人間よりもビートルズを優先していたし、それはクラインが相手でも変わらなかった。


 アラン・ステックラーがふり返っているように、クラインがビートルズの不興を買った最大の理由は、その財政的な手腕ではなく、細々としたディテール処理のぞんざいさだった。


クラインにはささいに思えることが、アーティストにとってはずっと重要だった、というケースがけっこう多くてね。一度、クラインと電話で話していたとき、リンゴが部屋に入ってきたことがあったんだ。わたしが電話を切ると、リンゴが「彼と話がしたい。もう一度呼び出してもらえるかな?」と言った。それでオフィスの人間がリンゴの代わりに電話をすると、クラインは留守だという返事が返ってきた。クラインはリンゴがすでに、わたしと彼の話を聞いていたことに気づかなかったんだ! その手のことが、リンゴをひどく怒らせたんだよ。


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