『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
レノンとハリスンはクラインとのつきあいに、さほど気を遣っていなかった。ビジネス的なことがらについては、アップルの立ち上げ時に見せていたようなナイーヴさをいまだに保ちつづけ、自分たちはなにをしても、その尻ぬぐいをする必要はいっさいない、魔法のような次元で暮らしているつもりでいた。だからこそこのふたりはクラインとの友情を維持しながら、同時に彼の放逐をもくろむような真似ができたのだ。この二枚舌の才を使えば、シーザー時代のローマでも成功できたかもしれない。だが彼らが相手にしていたのは、音楽業界の会計をこと細かに調べ上げることが、三度の飯よりも好きな男だった。