『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
一九七三年の最後の数か月は、別れの季節となった。現にウィングスの解散危機も、ほかのビートルたちが経験していたトラウマに比べたらものの数ではなかった。ジョージ・ハリスンとパティ・ボイドの結婚生活は数年前から停滞し、共通の友人のエリック・クラプトンはずっと、夫と別れるようにボイドをせっついていた。
ボイドは結婚生活を立て直そうとしたが、ハリスンの精神主義とコカインの常用によって、ますます孤立感を深めてしまう。一九七三年になると彼らの家は、不義密通の温床と化していた。ハリスンがクリッシー・ウッドと休暇を過ごしている隙に、ボイドはクリッシーの夫のロニーと、短い情事を楽しんだ。また定期的にこの家を訪れていたクラプトンは、ボイドに対するやむにやまれぬ気持ちを、ほとんど隠そうともしなくなっていた。