『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット
[訳]奥田祐士
[発行]イースト・プレス
交渉の最後の年に、リチャード・スターキーの人生は大きく様変わりした。一九八八年の晩夏、彼のアルコール依存症は、もはや手の着けようがないほど悪化していた。「オレは何年も、完全に記憶をなくしていた」と彼はふり返っている。「なにがあったのか、さっぱり覚えてない。記憶喪失状態で生きていたんだ。いったいどうやって毎晩、ベッドにたどり着いていたのやら。オレたちにはわからなかった。それぐらい、マトモじゃなくなっていたんだ」
九月のはじめまで、彼は常軌を逸した量の酒とコカインを摂取していた。ようやく、自分たちには助けが必要だと気づいたスターキーとバーバラ・バックは、アリゾナのリハビリ施設にみずから入所した。