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ザ・ビートルズ 解散の真実
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ビートルズという幻想

『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット [訳]奥田祐士 [発行]イースト・プレス


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 それはどんな救世主(メシア)であっても、頭を悩ませたに違いない難問だった。再臨でもまだ不足だとしたら、いったいどうすればいいのだろう?


 ビートルズがくり広げる、意外性に満ちたドラマを見守ってきた人々は、もはや演技を楽しめないという理由でスターたちが舞台を降板すると、すっかりしゅんとしてしまった。ビートルズの音楽を愛する人々は、そこに無限の可能性を感じ、仲間意識、団結、そして愛の夢を見ていた。グループが解散しても、彼らには音楽と思い出があった。だがビートルズが過去を照らしてきたまばゆい光に、ノスタルジアのやわらかな光で対抗するのは、しょせん無理な相談だった。


 ビートルズのいない人生が、なんらかの苦痛を伴うとしたら──当のビートルたちにすら、そうなることはわかっていた──その苦痛を癒やせるものは、再結成以外にないはずだった。一九六四年には、あたかも彼らの聖なる存在には治癒効果があるといわんばかりに、病気の子どもや障がいのある子どもたちが、車椅子でグループの楽屋に送りこまれていた。


 彼らが解散すると、日常の奇蹟だけではもはや足りなくなった。いかに本人たちが思い悩み、打ちひしがれていようと、ビートルズは今や、まったく異質なユートピア観を持つ未来に、六〇年代の理想を受け継いでいく責任を背負わされていたのである。


 人々は総じて、ビートルズには現実を変容させ、過去を作り直す力があると信じていたが、彼らに期待するものは、それぞれに違っていた。現実であれ、空想であれ、一九六七年の楽園に送り返してほしいと願う人々がいる一方で、もっと控えめな願いを持つ人々もいた。彼らは単に、六〇年代の夢とは決して合致することのなかった人生を、ほんのひとときでも忘れ去りたいと願っていたのだ。


 いずれの幻想にも組みこまれていたのは、ビートルズはリスナーを、精神的なものであろうと、政治的なものであろうと、あるいは単に感情的なものであろうと、とにかくどこか別の場所に誘う存在であってほしいという思いだった。ビートルズの再結成によってもたらされるものへの期待は、人によって微妙に異なっていた。ひとつ、つねに変わらなかったのは、その期待の重さと、その先にはどうあっても失望が待っていることだった。

『アンソロジー』が発表されると、世界はビートルズが現に再結成したこと──そしてなにも変わらなかったことを、受け入れる以外になくなった。現実が幻想に取って代わったのだ。一九八〇年にジョン・レノンは、ほかのだれかの幸福について、グループが責任を問われるいわれはないと主張していた。世界がレノンの正しさを思い知るためには、一五年の歳月と、彼が不可能だと主張していた再結成が必要とされたのである。


 二度目ともなると、ビートルズの解散で、世界中が悲しみに沈むようなことはなかった。それどころかこの決定は、ほとんど気づかれないままに終わった。もしかすると人々は総じて、この不完全で、あやまちを犯しやすく、いくぶんしっくりいっていない男たちのグループに対して、かくも多大な希望を寄せていた自分たちに決まり悪さを感じていたのかもしれない。待望久しかった再結成の記録(レコード)、〈フリー・アズ・ア・バード〉と〈リアル・ラヴ〉は、あたかも存在しなかったかのように、あるいはそもそも存在すべきではなかったかのように、すぐさま人々の記憶から消え去った。


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