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ザ・ビートルズ 解散の真実
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Afterword by The Translator

『ザ・ビートルズ 解散の真実』
[著]ピーター・ドゲット [訳]奥田祐士 [発行]イースト・プレス


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訳者あとがき



 ここにお届けするのは Peter Doggett 著 “You Never Give Me Your Money:The Battle for the Soul of THE BEATLES”(二〇〇九年)の全訳である。


 著者のピーター・ドゲットはイギリスの音楽ジャーナリスト。長らくマニアックな音楽誌「レコード・コレクター」の編集部に在籍し、大量のインタヴュー記事、評論、レコード評を執筆してきた。一九九九年には同誌を離れ、フリーランスとして活動。「Mojo」や「Q」などさまざまな雑誌に寄稿すると同時に、キンクスやホリーズといったアーティストのCD再発にも深く関わっている。著書には本書のほかにカントリーとロックの対立を歴史的に追った “Are You Ready for the Country?”(二〇〇〇年)、そして著者にとってはティーンエイジャー時代からのテーマだったという、六〇年代後半から七〇年代初頭にかけてのロックと革命的な政治の入り組んだ関係を年代順に記録した “There's a Riot Going On:Revolutionaries, Rock Stars and the Rise and Fall of 60s Counter Culture” (二〇〇七年)などがあり、最新作はジギー・スターダスト時代のデイヴィッド・ボウイを詳細に解説した “The Man Who Sold the World” (二〇一二年)。


 邦訳にはこれまでに『ルー・リード/ワイルド・サイドを歩け(Growing Up in Public)』、『ジョン・レノン大百科(The Art and Music of John Lennon)』(ジョン・ロバートソン名義)、そして『ジミ・ヘンドリックス─ 全曲解説シリーズ(Jimi Hendrix:The Complete Guide to His Music)』があり、そのうちの『ルー・リード~』は拙訳、そして『ジョン・レノン~』は本書にディスコグラフィ兼年表を寄せてもらった藤本国彦氏(速水丈名義)とこの訳者との共訳で刊行されている。これはあくまでもめぐり合わせに過ぎないのだが、こうなるとなんらかの縁を感じずにはいられない。


 そんな彼の著作の中でも代表作と目されているのが、この “You Never Give Me Your Money”である。「コントロールが効かない名声の持つ、グロテスクな副作用の息を呑む記録」(「Q」誌)、「神々の修正前の素顔を描いた、なんとも魅力的な一冊」(「ガーディアン」紙)といった評文からもわかるように、二一世紀に入ってますます甚だしさを増してきた、ビートルズの神話化に対する鮮烈なカウンターとして、主に歓迎されているようだ。


 むろん、それが本書のいちばんの意義であるのは間違いない(そのせいでところどころ、ケチのつけすぎじゃないかと思える箇所もあるが)。だが訳者にとってそれ以上にありがたかったのは、あまりに同時にいろいろなことが起こっていたせいで、前後関係がわかりにくくなっていた解散前のあれこれをわかりやすく整理してくれたこと、そしてあまりまとめて語られることのない、解散後の四人の歴史を並列して辿ってくれたことだった。


 ちょっと個人的な話をすると、訳者は一九五八年生まれ。なのでリアル・タイムでビートルズのファンになるには、少しばかり若すぎた。小学校六年生の時、「サザエさん」の途中に入るステレオのCMで動くビートルズを目にし、中学三年生の時、二組のベスト盤(赤盤、青盤)と各メンバーの活発なソロ活動を通じて、本格的なファンになった世代である。その当時、メンバー間の関係は、おおよそ次のように理解されていた──リンゴはほかの三人全員と仲がいい/ジョンとジョージもつき合いがある/ただしジョンとポールは完全な絶縁状態で、共作はおろか、口をきくことすらありえない。


 ジョンの死後、実際にはポールともちょくちょく会っていたことが明らかにされたのだが、それにしても本書を読むまで、ここまで濃密なつきあいがあったとは知らなかった。また七〇年代当時、たびたびニュースになっていた「再結成」も、(あのころはあまりにもひんぱんにそのネタが出てくるので、どうせ眉唾だろうとしか思っていなかった)実際にはありえなかった話ではなかったことがわかって、ひどくじれったい思いをさせられてしまった。


 そして本書で特に強調されている、ジョンに認められたいというポールの願い。うっすらと気づいてはいたけれど、これだけ本人の言動を通じてその証拠を挙げられると、もはやポールが音楽をやっている動機は、それしかないような気がしてくる。ちなみにリンダとの関係も、本書を読めば、当初はジョンに対する意趣返しでしかなかったことが確信できるはずだ(それにしてもヨーコとリンダは実によく似ている。たとえばどちらもブルジョア家庭の出であること、アメリカからやって来たこと、年上で娘がいること、ぱっと見にはわかりにくい美しさがあること……)。こうしたポールの「報われない愛」も、本書の読みどころのひとつだ。


 このふたりを前にすると、どうしてもジョージとリンゴは脇役にならざるを得ない。それでもあとのふたりがいなかったら、この「物語」はずっと平板なものになっていただろう。


 いや、脇役という意味で言うと、もっとも存在感を発揮しているのはヨーコかもしれない。本書では彼女とビートルズ(およびジョン)との関わりが、賞賛すべきところは賞賛し、批判すべきところは批判するというスタンスで描かれている。訳者自身はアーティストとしてのヨーコはすばらしいと思っているし(ついでに言うとリンダの写真、特に彼女が六〇年代に撮ったロック・アーティストのポートレイトも大好きだ)、音楽作品もずっと聴きつづけているが、はたして彼女はビートルズの音楽を好きになったことがあるのかな? という疑問はつねについてまわっている。


 最後に本書の大きなテーマである「金」。本文にはポールの「ぼくからすると古いビートルズ音源の出し直しは全部、ちょっと搾取のにおいがする」という発言が引用されているが、その言葉を知ってか知らずか、近年、「音源の出し直し」には拍車がかかっている。そこにはたしてどの程度まで、会社ではなく、メンバー(および未亡人)たちの意向が反映されているのかはわからない。しかしクオリティ・コントロールが行き届いているのは確かで、少なくとも「ビートルズ」の名に恥じないものではあると思う。むしろパッケージ・メディアが終焉に向かっている現在、出せるものは全部出しておいたほうがいいのかもしれない、と訳者などは考えているのだが……。


 末筆ながら、最初に本書の翻訳をご依頼いただいた金子伸郎氏、実際に編集を担当された河井好見氏、巻末のディスコグラフィおよび年表を担当していただいた藤本国彦氏、そして訳者からの質問に答えていただいたピーター・ドゲット氏に感謝したい。


二〇一四年一一月 

奥田祐士     

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