『羽生結弦 会見全文』
[著]アスリート研究会
[発行]ゴマブックス
2018平昌オリンピックを目前にしたフィギュアスケートの2016-2017シーズンがスタートしています。
羽生結弦選手のこれまでを振り返ると、オリンピック・チャンピオンとして臨んだ2014-2015シーズンは、閻涵(ハン・ヤン)選手(中国)との衝突事故と尿膜管遺残症の手術、2015-2016シーズンはデニス・テン選手(カザフスタン)との衝突未遂騒動とリスフラン関節靱帯損傷と、シーズン中に競技会場でのトラブルと自分自身のケガの両方に煩わされてきました。その中で、世界のフィギュアスケートのトップ選手が集まるグランプリ(GP)シリーズでの活躍や競技での300点超えの達成など、目覚ましい活躍を続けてきたのはご存知の通りでしょう。
すでに火蓋が落とされている今シーズン、羽生選手は、初戦の「オータムクラシックインターナショナル2016」(カナダ・モントリオール)で260・57点(ショートプログラム=SP:88・30、フリースケーティング=FS:172・27点)で優勝。
自身のグランプリシリーズ初戦であったスケート・カナダ2016(カナダ・ミシサガ)は263・06点(SP:79・65、FS:183・41)で2位にとどまったものの、NHK杯(札幌市)は301・47 点(SP:106・33、FS:216・07)で堂々の優勝を果たし、2016年12月8~10日にフランス・マルセイユで行われるグランプリファイナルに駒を進めています。
またグランプリファイナル以降は、連覇の期待がかかる全日本フィギュアスケート選手権(大阪・門真市)と重要な競技会が続きます。
2017年には、四大陸選手権(2月15~19日、韓国・江陵)、世界フィギュア選手権(3月29日~4月2日、フィンランド・ヘルシンキ)と重要な大会が行われ、これらで羽生選手の雄姿を見られる可能性もあります。
羽生選手はこれまで、四大陸選手権への参加は2010-2011シーズンの1回のみでしたが、今シーズンの同選手権は平昌オリンピックでのフィギュアスケート会場でもあるため、下見を兼ねての出場がありそうです。
羽生選手は今シーズンを迎えるにあたり、演技については、「今までと同じ演技をするつもりはない」ときっぱり言い切り、新しい技にチャレンジしています。
そのひとつが4回転ループの演技での成功です。成功すれば世界初の4回転ループなどの習得を今後の目標に掲げ「ループはあともうちょっとという感覚。史上初のものをやりたい野望を抱いている」と意気込んでいます。
4回転ループは、オータムクラシックでは成功したものの、グランプリシリーズでは成功できていません。さらに、4回転ループに集中し過ぎた結果、芸術要素を表す演技構成点が伸び悩み、合計得点でライバルの後塵を拝することにもなっています。
フィギュアスケートのSPとFS、それぞれの得点を合計した総合得点は演技構成点や芸術要素、演技に取り入れる技の難易度で上下するので一概に「〇〇〇点」が最高点とはいえません。その中で羽生選手は今シーズン、自らが記録した330・43点(2015年グランプリファイナルで記録)をどこまで更新できるのか、世界のフィギュアスケートファンが注目していることに間違いありません。
本書では、ソチ・オリンピックでの優勝以降を中心に羽生選手の家庭環境やノービスからジュニア、シニアと続く競技生活の主な出来事を振り返っています。
これまでの歩みを振り返り、今後も続くであろうと容易に想像できる“羽生結弦の挑戦”に思いを馳せて下さい。