『金のつくり方は億万長者に聞け!大富豪トランプの金持ち入門』
[著]ドナルド・J・トランプ
[訳]石原薫
[発行]扶桑社
『トランプ自伝』でも他の二冊の回顧録でも、私の典型的な一週間をたどった章を設けた。「アプレンティス」のプロデューサー、マーク・バーネットに会ったとき、彼はその章が一番面白かったと言った。他の読者からもそういう声をよく聞く。従って、ご好評につき、二〇〇三年秋の、私の多忙な一週間がどんなだったか、平均的な例をここに紹介しよう。
この章には、金持ちになるための具体的なアドバイスはないが、私がどんなふうに仕事を楽しんでいるかが読み取れるだろう。私が今ほど成功しているのは、何と言っても楽しんでやっているからなのだ。
月曜日
午前9時
建築家のコスタス・カンディリスと打ち合わせをする。とてもエレガントに一週間をスタートさせる。コスタスとは何度かプロジェクトを一緒に手がけ、成功させている。その中には、国連プラザのトランプ・ワールドタワー、トランプ・パークアベニュー(五九丁目とパークアベニューの角。完成したばかり)、そして、フィリップ・ジョンソンとスキドモア・オウィングズ・アンド・メリルと共同設計しているトランプ・プレースがある。これはハドソン川に沿って一六棟のビルを建てる計画だ。ここがウェスト・サイド操車場跡地だったのを覚えている人もいるだろう。私が一九七四年に初めてペン・セントラル鉄道から買い取るオプションを確保して以来、関わってきた敷地だ。私がマンハッタンでまとめた最初の大きな取り引きだった。三〇年近くたった今、建設中の五棟目と六棟目のビルについて話し合う(ネバー・ギブ・アップ)。
私の長男、ドン・ジュニアも打ち合わせに参加している。建設工事は予定どおりの日程で進んでおり、最初に完成した三棟のコンドミニアムも大成功だったようだ。しかし、コスタスも私もこれまでの成功に甘んじることはなく、細かな問題点を一つ一つ潰している。コスタスは建築家にならなかったら、きっと優秀な外科医になっていただろう。それだけ細部にこだわるのだ。彼とは仕事の相性が抜群だ。フィリップ・ジョンソンにも並ぶほどの最も卓越した建築家の一人だと思っている。
彼とは他に、ウェスト・サイド操車場跡地の一角にあり、私が開発して市に寄付した公園に対する反響についても話し合っている。人をがっかりさせるのは不本意だが、私からの一〇万平方メートル(三万坪)の土地のプレゼントに反対する人たちがいる。何と言ったらいいのかわからないが、ただ、どれほど努力しても、皆に好かれることはないということだろう。
私はキッチンや浴室の設備に目を通し、最上のもので行くことに決める。私の名前や商品は品質の代名詞となっているが、それにはちゃんとした理由がある。私はどんなものも絶対にけちらない。ドン・ジュニアが、第四棟の落成式が楽しみだと言う。落成式は建設チームにとって一大イベントで、建物の構造、つまり地上部の躯体の完成を祝うために、関係者全員がビルの最上階に集まりパーティーを開くのだ。
午前9時30分
ノーマが部屋に来て、オスカー・デ・ラ・レンタから電話が入っていると言う。コスタスと次は二週間後に会う約束をする。今年ミス・ユニバースに選ばれたアメリア・ヴェガはサントドミンゴの生まれで、オスカー・デ・ラ・レンタと同じ出身地だ。オスカーが彼女に会いたくなるのも無理はない。彼女はその一八〇センチすべてが美しいのだ。私たちは、彼女に限らず、ミス・ユニバースのコンテストそのものも誇りに思っている。七年前に買収して以来、大成功している。テレビの視聴率では他番組を上回り、国際的にも高い評価を得ている。エクアドルは、何百万ドルもかけて二〇〇四年のコンテストのホスト国になった。私たちも行くのを楽しみにしている。
オスカーの話に戻る。彼はすべてにおいて一流だ。彼の非の打ち所のない仕事を見れば一目瞭然だ。
午前9時45分
私をごまかそうとしている、わかったつもりの建設業者に電話を入れる。この業界はろくでもない人間がよってくることもあるので厄介だが、やるべきことはやらねばなるまい。私がすべきこととは、彼らを怒鳴りつけることだ。
午前10時
三人からの電話がつながっている。アトランティックシティーにある三つのカジノのCEO兼社長、マーク・ブラウン、ウッディ・アレンの事務所、そしてブルームバーグ市長だ。ウッディ・アレンもマークも大事だが、まず市長の電話に出る。ニューヨーク市長というのは、この地球上で屈指の困難な仕事であることを考えれば、彼は非常によくやっていると思う。企業経営も難しいが、市の運営も難しいだろう。ニューヨークとなれば、なおさらだ。
ウッディ・アレンは、私が所有するフロリダ州パームビーチの高級リゾートクラブ、マール=ア=ラーゴに滞在するかもしれない。私はウッディ・アレンの映画に出たこともあり、彼の映画を一本も欠かさずに観ている。
午前10時30分
今日初めてのダイエットコークを飲む。ミネラルウォーターを飲むべきなのはわかっていて、そうするときもあるが、ダイエットコークがとても好きなのだ。イリーナ・ドヴォロヴェンコが訪ねて来る。アメリカンバレエシアターのバレリーナだ。彼女はセンセーショナルなダンサーであるだけでなく、驚くほどの美女でもある。私は特にバレエ・ファンというわけではないが、イリーナのためにそうなるかもしれない。
ニール・カヴートがキャスターを務める番組のクルーがインタビューの準備を終えて待っている。内容を確認してすぐに始める。何十年もインタビューを受けているから、たやすいことだ。特に、ニールのように感じが良く、見識もある相手だとやりやすい。彼も彼のチームもプロに徹している。彼の番組はケーブルテレビのビジネス番組の中ではトップだ。
午前11時
インタビューの間に電話が一七件あり、さらにかかってくる電話の合間にかけ直す。事業を何年もやっていると、自然と仕事の優先順位がわかる。それは、たとえごく普通の日でも、勢いを保つために必要な原動力であり、成功し、成功し続けたいと思ったら不可欠なものだ。「ニューヨーク・ミニット」(「非常に早い」の意)という言葉を知っているだろう。だが、それももう古い。いまや「ニューヨーク・セカンド」だ。大げさではなく、一日に何百件もの電話を処理しなければならなかったら、一秒一秒が大事なのだ。会話が一つでも行き詰まれば、下手をすると一時間も勢いを止められることがある。だから勢いが大事だと言っているのは決して冗談ではないのだ。それに勢いを保っているときと、そがれたときと、自分でよくわかるものだ。
ジョー・シンクに電話をかけ直す。彼は、アメリカン・アカデミー・オブ・ホスピタリティー・サイエンシズの役員で、同アカデミーは、誰もが欲しがる五星ダイヤモンド賞を選定する機関だ。私の所有物件もいくつか受賞している。ジョーは、活発で寛大な人だが、こと賞の選定に関しては、見る目が厳しく、はっきりした考えをもっている。彼はサルデニアから戻ったばかりだが、それでもパームビーチのマール=ア=ラーゴ・クラブが世界で一番美しいリゾートだと言ってくれている。彼が言うと、とても大きな意味を持つ。ジョーのことはずっと好きだったが、もっと好きになった。
レジス・フィルビンに電話をかけ直す。彼と夫人のジョイは、私の親友だ。想像できないかもしれないが、彼はテレビで見るより、実物のほうがもっと面白い。二人と過ごす時間はいつも楽しみだ。二人とも最高の人たちだ。「ジャン・ジョルジュ」でディナーの約束をする。そのレストランは、トランプ・インターナショナル・ホテル&タワーの中にあり、世界有数の高級店と考えられている。