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まえがき

『説得する力』
[著]団野村 [発行]日本文芸社


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◎エージェントの仕事とは「説得する」ことである



 私の仕事はいかに人を説得するか、である。


 様々な説得の場面がある。まずは選手に対して、

「あなたにはこれだけの価値があるのです」


 と“説得”して代理人契約を結ぶ。この場合の説得は、説明に近い。そして代理人として球団との移籍、あるいは年俸交渉に臨む──。


 アメリカと日本の交渉はかなり違う。アメリカの場合は、こちらも球団も“レバレッジ”を求めている。レバレッジとは金融業界でよく使われる言葉で、「てこ」を意味する。少ない投資で多額のリターンを得ることを指している。


 球団側は、有能な選手をなるべく安く獲得したい。私たちは、いかに高く契約するか。交渉とは、その妥協点をいかに探るか、である。


 球団は本当に欲しい選手であっても、こちらの提示をそのまま飲むことはない。この選手と契約すればどれだけの利点があるのか、こちらは説得する──。


 交渉の過程で妥当な金額が見えてくる。双方がどこまで譲れるか、交渉とは妥協点を探る話し合いなのだ。


 とはいえ、こちらが最初からその妥当な金額を提示すれば、さらに値引きされる。様々な条件を主張、説得する。先にある条件を失っても、別の条件を加えることもある。


 ぎりぎりまで粘るから、正当な金額になるのだ。このぎりぎり、最後の微妙なこだわりが大切なのだ。


 日本でもレバレッジを求めていることに変わりはない。野球界に限らないのだが、日本ではレバレッジ以上に感情が交渉を左右する。一度、交渉の席で口論になると、

「あいつとは口を利くな」

「奴は排除しろ」


 というふうになりがちだ。アメリカの場合は交渉が決裂しても、ビジネスと割り切っている。日本では交渉が決裂すると、関係まで断ってしまうことがある。


 アメリカでも日本でも重要なのは説得するときに、信念を持つことであると思っている。自分の信じていることをきちんと相手に伝えること。そして、その信念を曲げないこと。


 私の行動を規定しているある人の言葉がある。


 メジャーリーグで代理人として活動していくには、メジャーリーグ選手会に承認してもらわなければならない。私を面接してくれたのは、メジャーリーグ選手会の顧問弁護士、ジーン・オーザだった。


 後にこのミスター・オーザが野茂英雄さん、伊良部秀輝さんなどの移籍を手助けしてくれることになる。


 面接の後だったと思う。私はオーザに「いい代理人になるのにはどうしたらいいか」と尋ねた。

「とにかく本を読め」


 私は(うなず)いたものの、この時点では彼の言葉の意味を理解していなかった。自分が代理人としてやっていくうちに、彼の言わんとしていることがなんとなく分かるようになった。


 野球に限らず様々な本を読むこと、法律を勉強すること。常に自分を磨くという意識が必要だということだ。


 オーザは「代理人には忘れてはならないことがある」と続けた。

「球団と選手の間には線引きをしなければならない。中途半端にその両方に足を置いてはならない。エージェントというのは、労働者、つまり選手の側に立たなければならない。常に経営者と闘っていく姿勢が大事なんだ」


 代理人は球団から頼まれて選手を探すこともある。長期的、継続的なビジネスを考えれば、もしかすると、球団にいい顔をしておいたほうがいいのかもしれない。しかし、それは駄目だというのがオーザの考えだった。


 メジャーリーグはストライキ、交渉を通じて、選手がフリーエージェントなどの権利を勝ち取ってきた。その中心にいたのがオーザだ。そのオーザの言葉には重みがあった。

「球団と喧嘩をしろとは言わない。ただ主張するところは主張する、そしてできる限り説得する。それがいい代理人だ」


 私は彼の言葉に従って、必死で歩いてきたのだ──。

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