『ハリルホジッチ 勝利のスパイラル』
[著]ローラン・ジャウイ
[著] リオネル・ロッソ
[発行]日本文芸社
モスタルでは、ヴェレジュは一大組織だった。そうでなければ優秀な選手は雇えない。現実に、クラブは、ある種の権威の象徴だった。戦争前の話だ。ユーゴスラヴィアの希望だったチームには、二〇〇四年現在、ほとんど何も残っていない。モスタルの表玄関にある旧スタジアムの地面はデコボコだ。指導者の数も少なく、モチベーションも高くない。予算は貧弱すぎ、補助金はないに等しい。ヴェレジュは自然と、影のような存在になってしまった。どうして、こんなことになったのか。
簡単に言ってしまえば、クロアチア人とボスニア人が対立しているからだ。サッカークラブも例外ではない。歴史あるビイェリ・ブリイェグスタジアムは、今やクロアチア人が利用している。