『ハリルホジッチ 勝利のスパイラル』
[著]ローラン・ジャウイ
[著] リオネル・ロッソ
[発行]日本文芸社
祖国では新聞の第一面を飾るスターが国を去るとなると、罵詈雑言の一つもないわけにはいかない一方、一晩経った翌日には移籍先で無名となる──ハリルホジッチの場合がまさにそうだった。はっきり言って、ナントでは誰も彼のことを知らなかった。
当時ナントのディフェンダーだった、誠実なるパトリス・リオの話を聞いてみよう。元フランス代表のマキシム・ボシスと無二の親友のセンターバックだったリオは、ずばり、こう言う。
「とにかくはっきり言って、誰も彼を知らなかった。ブジンスキーは、すごい選手だと言うばかりで、何も教えてくれなかった。練習で初めて会ったんだ」
ナントの名誉のために、状況を説明しておこう。当時、サッカーの試合は、土曜の夜にTF1の「テレフット」で、日曜の午後に「スタッド2」で、ダイジェスト放送されていた。