『ハリルホジッチ 勝利のスパイラル』
[著]ローラン・ジャウイ
[著] リオネル・ロッソ
[発行]日本文芸社
地雷原。火薬庫。経済破綻。これ以上悪いことはない。他の人、他の時代だったら、「仕事上のアクシデント」と言われたかもしれない。
だが、ハリルホジッチは、民放テレビTF1の元社長で、その後スタッド・レンヌの会長を務めたパトリック・ル・レイではないし、PSGは、期待したほど視聴率が上がらないクリストフ・ドゥシャヴァンヌ司会のテレビ番組ではない。
過剰なドラマ仕立てが好きなハリルホジッチは、自分の好きなように事態を操ろうとした。
「目の前はカオスだった。私は私にできることをする。何も約束しない。現状は本当に絶望的だった」
ただ、今回は、みな、彼を本当に信じようとした。実際のところ、PSGはリーグ・アンを十一位で終えたばかりだった。ルイス・フェルナンデス監督とローラン・ぺペレ会長は、数週間前からメディアを介して発言しあう以外、直接話すことはせず、互いに過ちの責任をなすりつけ合うばかりだった。フェルナンデス監督は、本物のワールドチャンピオン、ロナウジーニョを一年目のジュニアのように扱った。お粗末な試合、スキャンダル、公になった対立、オペラの花形女性歌手のような行動……。
ハリルホジッチはこういう状況を引き継いだのだった。ハリルホジッチの監督就任から二カ月後、『フランス・フットボール』のコラムに、やや煽情的に、やや現実的に、関係者に苦痛を与えるような、ちょっとした文章が載った。まったくハリルホジッチらしいやり方だ。偶像を破壊して、宝石を売ろうというのか。「偉大なクラブの監督となって気兼ねを感じるか」と尋ねたローラン・カンピストロンに、ハリルホジッチはこう答えた。
「偉大なクラブ? 偉大なクラブとは、どのクラブのことです? PSGが偉大なクラブというのは幻想でしょう」
二〇〇三年八月二十二日金曜日の号に、ハリルホジッチのインタビューは三ページにわたって掲載された。インタビューのタイトルは“私の仕事は成功する”。
十七カ月後、カン・デ・ロッジュを裏門から去るとき、ハリルホジッチが友人たちに語ることができた言葉もまた、同じだった。
「雇われた時期が違えば……私の仕事は成功するはずだった」
とりつかれたかのように、自分を表現する短いメロディーのように何度も繰り返した言葉だ。まるで、監督という仕事こそが、サッカー界という奇妙な世界で唯一確かな価値であるかのように。