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まえがき

『お前ならできる』
[著]小倉全由 [発行]日本文芸社


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文庫版まえがき


 二〇一一年(平成二十三)の夏の甲子園で全国制覇を成し遂げてから三年が過ぎた。その間、いろいろなことを教えられた三年であった。


 翌二〇一二年夏、その次の二〇一三年夏と連続して甲子園に出場したが、その二回とも初戦で敗退してしまった。優勝した翌年から二年続けて初戦敗退という悔しさを味わって、あらためて野球の難しさ、勝つことの厳しさを実感した。


 試合に勝って優勝することだけがすべてではないが、甲子園に行ったからには勝ちたい、優勝したいという気持ちはどんな監督にもある。また一からスタート。さらなる練習を重ねて、もっと強いチームを作らなければと強く心に誓ったものである。


 昨年の十二月に左足の(はん)(げつ)(ばん)(いた)めて手術をしたことも私を成長させた。


 半月板は、(しつ)関節の(だい)(たい)(こつ)(けい)(こつ)の間にあるクッションのような役割を果たす軟骨組織である。(ひざ)を強く打ったり、ねじったりするときに傷めやすく、運動中に発症することの多いケガで、年をとるにつれてもろくなっていく。


 一か月ほど松葉づえの世話になるはめになり、その間、当然満足のいく指導はできない。言葉で教えるしかなかったのだが、身体(からだ)が自由に動かないということが、こんなにつらいものなのかと、なんとも情けない気持ちになった。


 と同時に、以前にも増して選手たちの健康を気遣い、練習によるケガや事故がないようにいっそう注意を払うようになり、彼らの気持ちも理解できるようになったと思う。


 思えば、いまから三十四年前に関東一高野球部の監督になったとき、まだ二十四歳の青二才だった。高校野球の指導者の誰よりも若輩で未熟な監督として、尊敬し目標にしてきた先輩の監督さんたちと競い合いながら、ともに戦ってきた。その私も今年で五十八歳。諸先輩の多くが現役を退き、私もベテランの域に差しかかっている。


 甲子園でそれなりの成績を残し、もう引退してもいい年齢なのだけれど、ありがたいことに「()(ぐら)監督のもとで野球をやりたい」「甲子園を目指したい」と野球部のドアを(たた)いてくる新入生がたくさんいる。


 必要とされている限り、また自分自身「やりきった」という気持ちになるまでグラウンドに立つ決心だが、その私の心の支えになっているのが、野球部を巣立っていったOBたちである。彼らが卒業して立派な社会人となって、幸せな家庭を築き、またグラウンドに帰ってきてくれる。「頑張ってるか」「無理すんなよ」などと後輩たちを励ましてくれる。指導者として、こんなにうれしいことはない。何物にも代えがたい私の財産である。


 今年もまた甲子園の熱い戦いの季節がやってくる。夏の大会が近づいてくると、「負けたら終わり」の決戦を前にして、私の監督としての闘争心にスイッチが入り、炎のような熱情が()き立ってくる。何度この季節を迎えても、この心の(たか)ぶりは静めることはできない。

「絶対に勝つ。勝って全国四千校の頂点に立つ」


 勝利への強い思いを胸に、グラウンドで選手たちと汗まみれになっている毎日である。



 二〇一五年六月吉日

小倉(まさ)(よし) 


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