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プロ野球「黒歴史」読本 メディアを騒がせた75人の男たち
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エンタメ
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斎藤佑樹

『プロ野球「黒歴史」読本 メディアを騒がせた75人の男たち』
[著]手束仁 [発行]イースト・プレス


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日本ハム

早稲田実では2006年(平成18年)夏は決勝で3連覇を狙う駒大(とま)()(まい)を延長15回引き分け再試合の末に破り、優勝投手となる。ハンカチで汗を拭う姿で人気になり、早稲田大進学後も注目を集めた。神宮大会優勝投手で締めくくり、万人注目のなかで日本ハム入り。


このまま「かつてのヒーロー」で終わるのか



 最初に斎藤佑樹という投手を意識したのは、彼が早稲田実2年の5月の連休だった。春季大会が終わり、夏に向けて練習試合で強化していく時期の早稲田実が、練習試合に鹿児島商を迎えた試合だった。当時、鹿児島商には投打に評価の高い選手がいたので、どんな選手なのか見てみたいということと、早実が前年に八王子市南大沢に新しい専用球場(王貞治記念グラウンド)をつくったということを聞いていたので足を運んだ。その試合に先発したのが斎藤佑樹だった。


 練習試合でも可能なかぎり選手の名前を聞くようにしているのだが、ネット裏にいた早実の部員に「九番投手、斎藤」と教えてもらった。斎藤や佐藤、伊藤、渡辺といった比較的よくある姓の選手のときは、あとで整理するときに混乱しないように下の名前も聞くようにしているので、「斎藤君は下の名前はなんというの?」と尋ねたら、「ユウキです。ユウはニンベンに右です」と教えてくれた。それで「サイトウユウキ」という名前を知った。


 ストレートが速いなと思ったので球速を測っている部員に聞いたら、「MAX139キロです」ということだった。試合は斎藤佑樹が完投して勝利投手にはなったものの、トータル5失点。序盤は鹿児島商の中軸に打たれるなどして4失点している。中盤からなんとか持ち直したという内容だったが、印象に残るものではなかった。それでも秋には背番号1をつける投手になるだろうなとは思っていた。


 だから、その年の秋季東京都大会に斎藤佑樹で早稲田実が優勝を果たしたときにも、「やっぱり、これくらいの投手には成長したんだな」という思いだった。センバツでは(かん)西(ぜい)と延長15回引き分け再試合となるが、これは9回にあとひとり抑えれば7対4で勝てるという場面で満塁から三塁打を打たれて延長になってしまうというものだった。


 結局、春はベスト8で横浜高に大敗した。それでも「早稲田実がベスト8まで残れたのは大健闘」というように思っていた。夏も西東京でも必ずしも大本命ではなかったが、そんななかで勝ち上がって甲子園まで進出した。正直なところ、甲子園であんなに大人気になっていくとは思ってもいなかった。

「環境が人をつくる」というが、まさにそれは甲子園という環境で活躍していくことで、きわめて短期間に驚くような成長を果たした斎藤佑樹にも当てはまるのではないかと思える。もちろんそれだけの素材力はあったのだろうが、メディアがハンカチのユニークさで話題を煽ったことで人気を得たこともたしかだ。


 新しいスマートな印象のヒーローが欲しいという欲求もあったのだと思う。そこにいいタイミングで「ハンカチ王子・斎藤佑樹」がハマったのではないだろうか。


 それは、ただ勝つという結果を出すだけではなかった。見守る人たち、とくにふだんはそのスポーツにあまり興味を持っていない母親世代ともいえる人たちの「こんな子どもがいてくれたらいいのになぁ」という願望を含めて注目度が上がったともいえそうだ。また、それに応えるかのように、斎藤佑樹はメディアの受け答えに対しても優等生だった。


 かつて、相撲界で貴乃花、若乃花の兄弟が人気を博して空前の相撲ブームをつくった時代があった。そんな時代には、じつはその当事者だけでなく、周囲にもライバルとして実力者が存在してレベルを上げていた。どの世界でもひとりのヒーローが実力をさらにアップしていくには、周囲のライバルの存在が大きく影響をおよぼしてくる。もちろん「ハンカチ王子・斎藤佑樹」に関しても同じである。


 大学に進学した斎藤佑樹にとって、同世代の大学野球の投手に好素材の選手が多かったことも幸いした。間違いなくその世代がプロ野球を背負っていく存在になっていくのではないかと思える世代だ。先にプロ入りしている選手に、田中将大(駒大苫小牧→楽天)、前田健太(PL学園→広島)、坂本(はや)()(光星学院→巨人)らがいた。彼らはすでにプロの世界で若きヒーローの位置にあった。


 その先頭集団に対して斎藤佑樹がついていけているのかどうか、いまは大きく引き離されてしまっているというのが正直なところであろう。ただひとついえることは、斎藤佑樹が入団したことで、これまでプロ野球にあまり関心がなかった人たちの目を向けさせたということである。少なくとも多くの新たなファン層をプロ野球に振り向かせたことだけはたしかだ。しかし、人の心は移ろいやすいものでもある。入団して6年を迎えた。かつての「ハンカチ王子」を知る人たちにとっては、その華々しい活躍がなければ、意識のなかでは「かつてのヒーロー」にしか思えなくなっていくというのもまた現実である。


 早稲田大時代の優勝インタビューでの名言、「自分が持っているものがわかりました。それは仲間です」という言葉。これにも多くのファンやマスコミ関係者が感心させられた。


 しかし、注目が集まり、スポットが当たるときは持ち上げてきたスポーツマスコミも、大谷翔平(日本ハム)や山田哲人(ヤクルト)、オコエ瑠偉(楽天)など新たなヒーローが出現すると、そちらに重きを置いていくのは当然のことである。


 入団2年目の12年には開幕投手を務めて、「さすが斎藤佑樹。きっちり調整してきたな」と思わせた。しかし、シーズンを終わってみたら、チームはリーグ優勝を果たしたものの、そのヒーローのひとりとして斎藤佑樹の名前が挙がることはなかった。それどころかシーズンの最も大事な時期を二軍で送らざるをえない状況にもなってしまっていた。


 人並み外れて負けん気の強い男である。本人としても「かつてのヒーロー」で終わりたくないことだけはたしかであろう。


 また、球団としても、斎藤佑樹が入団した年の出来事が空騒ぎではなかったということにしたいはずだ。新たなヒーロー大谷の入団によってスポットライトが弱くなった分だけ、本当の斎藤祐樹の実力を示す時期になっているのであろう。


 同世代の「仲間」をライバルとして、その投げ合いや対決にワクワクしたいファンが待っている。

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