◆子育ての不安のダントツは「将来の教育費」
私のところには毎日のように、家計に関する悩み相談が寄せられます。
相談者の年齢層は幅広く、本当にさまざまな方が、私のことを頼ってくださいます。社会人になったばかりの若い方もいれば、定年を迎え、年金生活に入られた方も少なくありません。
ただし、そのなかでとくに多いのは、30~40代の方です。
30~40代といえば、子育て世代のど真ん中。さらに、マイホームを購入するのもこの世代が多いですから、教育費と住居費という、人生の中でも指折りの大きな支出が重なって、お金の面で悩める時期でもあります。
相談者の方の中には、すでにお子さんがいらっしゃる方ばかりでなく、「そろそろ子どもをもうけることを考えようか」という段階の方もたくさんいらっしゃいます。
そして、そのほとんどが、判で押したように「教育費が心配」と嘆くのです。
最近、ある女性(30代・既婚)に、次のように尋ねられました。
「先生、テレビで見たんですけど、教育費って子ども1人につき3000万円以上かかるんですよね? うちは、この間マンションを買ったばかりでお金がないし、夫のお給料も上がりそうにないから、子どもはあきらめるしかないですよね……」
こうした悩みは、この方に限ったものではありません。家計相談の現場で、同じような声は本当によく耳にします。
それに対する私の答えは、いつも同じ。
「そんなことはないですよ。お金のせいで、お子さんをあきらめないでください!」
ただ、私がそう助言しても、なかなか相談者の方は納得してくれません。たいてい、
「でも、お金がかかるって言われているじゃないですか」
と食い下がられてしまいます。
たしかに、テレビや新聞、雑誌などのお金に関する特集では、「教育費にとてもお金がかかる」ということを、半ば脅しのような感じで報じています。また、国が公表しているデータでも、教育費に少なからずお金がかかることは実証されています。
そうした情報を頻繁に見聞きすれば、「お金がないと子どもは持てない」「お金がないのに子どもを産んだら大変なことになる」と、恐怖心に近い思いを抱くのもムリはないでしょう。
◆子どもにかかるお金はもっと減らせる
2008年に内閣府が実施した『社会意識に対する世論調査』によると、子どもがいる親・約5500人に「子育ての何がつらいか」を尋ねた項目で、ダントツトップにきたのが「子どもの将来の教育にお金がかかること」(45.8%)でした。
さらに、2位も「子どもが小さいときの子育てにお金がかかること」(25.5%)であり、そのほかの「相手をするのに体力や根気がいる」や「自分の時間がなくなる」といった回答を押さえて、金銭面でのつらさが上位を占めています。
このように、子どもを持つ人が2人いれば、どちらか一方は教育費に悩んでいる――今はそんな時代なのです。
先ほど出てきた方もそうでしたが、子育て世代が教育費に対して敏感になっているのは、不況による収入ダウンの影響も大きいでしょう。
「毎年のように年収がダウンする」「20代のときの方が年収は高かった」などの例は、枚挙にいとまがありません。
そうした状況の中、教育費の負担を重く感じるのは、当然のことかもしれません。
現実問題として、子どもができれば支出は増えます。人が1人増えるわけですから、教育費だけでなく、生活費も上乗せされます。
「ただでさえ余裕がないのに、子どもがいたら、ますます生活のレベルが落ちる」
そんな言葉を口にした方もいました。
つまるところ、子どもは「生活に余裕がある人だけが持つことを許される存在」であり、いわば「贅沢品」。子育ては「高級な趣味」といったところでしょうか。
しかし、私はこうしたとらえ方に、激しく違和感を覚えるのです。
「子ども=贅沢品」というのは、完全に子どもをお金で測ったときの発想です。
きれいごとのように聞こえるかもしれませんが、子どもは絶対に「お金で測れるもの」ではないと思います。
世の中には、お金という尺度で測ってはいけないものがいくつも存在しますが、子どもはその最たるものではないでしょうか?
それに、本気でお金をかけないと決めたら、実のところ、いくらでも手はあります。
もちろん、かけるお金をゼロにすることはできません。
子どもを養ううえでは、最低限発生するお金があり、それはどうしても準備する必要があります。
その一方で、かけなくてもいいお金もたくさんあるのです。この部分を見直せば、子どもにかかるお金は劇的に減らせるでしょう。世の中には、そのことを知らない人がとても多く、残念です。
「教育費が高いから、子どもはムリ」とあきらめてしまうのは、本当にもったいないことだと思うのです。