『女の子の学力を大きく伸ばす育て方』
[著]江藤真規
[発行]すばる舎
「我が子には将来、社会で活躍できる人になってほしい」
親ならみな、そう願うものです。我が子が男の子でも女の子でも、その願いは変わらないでしょう。
そして、我が子が成長した際には、やりたいと思うことを自由に選べる広い選択肢を持たせてあげたい。そのために、「子どものうちに基本的な学力と学習習慣をしっかり身につけさせたい」と考えます。
とくに幼少期から10歳くらいまでは、親が子どもにもっとも関われる時期です。あらゆる方向に好奇心を広げ、学ぶこと、経験することの楽しさを知れば、子どもは学習へ自発的に取り組めるようになるでしょう。結果として、学力を大きく伸ばす可能性を高めます。
そして、いずれ自分自身の進路を決める際にも、「私には○○はムリだから△△へ」といった消去法の考え方ではなく、「私は□□が好きだから」「□□を学んで社会の役に立ちたい」と、主体的に、肯定的に人生を生きていくことができるようになるのだと感じます。
このように子どもの可能性を広げ、力を備えさせていくのが親の役割なのでしょうが、女の子と母親の関係には、少しばかり工夫が必要だと私は思っています。
「母と娘」には、同性同士ゆえの共感的にわかり合える側面があります。しかし、自分自身が経験してきたからこそわかったことを、「こうするのが一番」あるいは「あなたには失敗してほしくない」という願いから、説得的に押しつけてしまう側面もあります。
さらに、女性の生き方も多様化してきた現在ならではの難しさもあるでしょう。
私は、お母さんたちの学びの場である「マザーカレッジ」を主宰し、これまでに何百人もの子育てをがんばるお母さんたちに出会ってきました。
子供の数だけ子育ての数があります。マザーカレッジのつながりを通して、たくさんの子育ての事例を聞き、そのなかでも「娘さんとの関係」に悩む声、「娘さんの学力を伸ばしたい」と願う声をたくさん伺ってまいりました。
みなさんのお話と同時に自身の経験をたどりながら、「女の子の可能性を広げ、学力を伸ばすために、母親がするべき本当に大切なことは何なのか」を考えました。そして、どうしてお母さんには、女の子を育てることが「難しい」「大変だ」と感じてしまうのかも考えてきました。
そこには母親としての心のありようが、大きく関与しているということに気づきました。
今回はマザーカレッジに通う、男女両方の子どもを育てているお母さんに、子どもの性格や学力の男女差など、興味深いお話をたくさん伺いました。
母親にとって、やはり女の子の子育ては「難しく手強い」ものであること。でも、それゆえの喜びや充実感もひとしおであることを、あらためて確認することができました。
女の子の学力を大きく伸ばすには、幼少期からの学びの環境、健やかな心を育てる環境が大切です。
そして、ともすれば「同じ女性だからわかっている」と思いがちなお母さんの、娘さんに対する「見守り方」の工夫も同じくらい、いえそれ以上に大切です。
この本にはそんな環境のつくり方、見守り方のヒントをたくさん盛り込みました。
今は社会人となった二人の娘の幼少期に、私が娘たちにやっていたこともお話しさせていただきましたが、もちろん「こうしてください」と言いたいのではありません。
「うちの娘たちには、こんなことがよかったみたい」というひとつの例として、のぞき見していただければと思います。
本書が、お母さんと娘さんとのさらなる素敵な関係づくりの一助になるなら、こんなに嬉しいことはありません。