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電通の深層
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ルポ・エッセイ
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エリート新入社員の鼻をへし折る電通カルチャー

『電通の深層』
[著]大下英治 [発行]イースト・プレス


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 高橋まつりさんは、母子家庭だった。藤沢は、彼女の生い立ちに、他人事とは思えない、ある種の親近感を覚えた。藤沢も母子家庭の環境で育った。現在の父親は三人目である。幸いなことに三人目の父親には、本当に恵まれたが、幼少期はとても辛い日々だった。


 藤沢は一九七九年に鹿児島で生まれた。実の父は、三歳のころに愛人をつくり、家を出ていった。その後、中学校に入学するタイミングで、母が再婚。ところが、その相手は酒乱で、藤沢も何度となく暴力を振るわれた。


 慶應義塾大学理工学部時代、藤沢は音楽活動に熱中した。母子家庭で育ったことが影響したのか、自己承認欲求を音楽に求めた。

〈誰かに、認められたい〉


 髪の毛を茶色に染め、自分で作詞作曲をした楽曲をライブで歌うことに快感を覚えた。


 夢を叶えるため、何度かレコード会社に売り込みにも行った。が、メジャーデビューの夢は遠かった。


 いっぽうで、音楽活動への夢をあきらめずにいた藤沢は、芸能事務所に所属し、アイドルグループ「チェキッ娘」の卒業生をプロデュースする。チェキッ娘は、「おニャン子クラブ」と「AKB48」の間、一九九八年一〇月九日から一九九九年一一月三日に活動したグループだ。藤沢は、メンバーの一人をプロデュースし、インターネット上でソロデビューさせている。


 大学三年になり、周囲は就職活動を始めていた。

〈サラリーマンにだけはなりたくない〉


 藤沢は、就職活動をしない道を選択するつもりでいた。

〈音楽の道で、生きていこう〉


 しかし、母親は理解を示さなかった。

「あなたは、幼いころ母子家庭で育ち、二番目の父親からは暴力を受け、そして、今は三番目の父親がいる。すごく複雑な環境で育ててしまったから、せめて、あなたには人並みの社会人になって欲しいの」


 母親の言葉が心に響いた。


 夢である音楽で食べていかないというのなら、音楽業界や芸能界、マスコミに関わることができる会社を視野に入れようと考えた。


 藤沢は数多くのOB訪問をこなしていくうちに、電通に魅力を感じた。

〈電通は、音楽業界、芸能界、マスコミを(ぎゆう)()る会社。この会社であれば、何らかの形で夢を叶えられるのではないか〉


 そんな思いで、藤沢は電通に入社した。


 だが、電通は、あっけなく藤沢の夢を打ち砕いた。


 配属先は、地方テレビ局を担当する部署だった。在京の民放キー局であれば、テレビ局の方が電通より上の立場にあるが、地方のテレビ局は電通に依存しているため、その立場は逆転する。


 その力ある立場を見せつけられる出来事に、藤沢は配属早々、遭遇する。届けられるお中元の量が半端ではないのだ。


 部長クラスとなると、3LDKの自宅の一部屋が、お中元とお歳暮のたびに贈り物で埋め尽くされるという。そんな生活をしていれば、気づかぬうちに自然と鼻が高くなってしまうのであろう。


 しかし、新入社員には、まだ、それが許されなかった。エリート特有の高くなりそうな鼻をへし折るという意味で、高圧的な指導を新入社員に対しておこなうということが、電通の伝統として長年受け継がれていた。


 幸か不幸か、藤沢は、体育会系的な組織に所属したことがないまま社会人になった。慶大の理工学部もきわめてクールな環境であり、先輩後輩という上下関係に左右されることもなかった。体育会系という上下関係を最重要視した企業カルチャーへの免疫をまったくもたず、むしろ、そういうものを苦手としてきた藤沢が選択した電通が、その最たる組織だということに、入社後に気づかされた。

〈まさか、ここまで超縦社会だとは思わなかった。そんなこととは知らずに入社し、それも配属された先が、電通の中でも縦社会が最も濃厚な部署だったなんて……〉


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