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(2021/12/6 追記)

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あとがき

『0秒リーダーシップ』
[著]ピョートル・フェリークス・グジバチ [発行]すばる舎


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 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 僕は1975年にポーランドで生まれました。当時のポーランドは共産主義でソビエト連邦の影響下にありましたが、1981年に独立自主管理労働組合「連帯」は民主化運動を始めたため、1213日戒厳令が公布され、1983年までポーランドは北朝鮮のような国でした。世界の国々が経済封鎖をしてポーランドをボイコットしたのです。


 80年代に食料が配給制になって、母が毎月区役所に足を運び、割り当てクーポンをもらっていました。たいていスーパーにはパンと酢しか置いておらず、突然肉が届いたりすると、人の長い列が店の前にできたものです。とはいえ、とうていみんなに行き渡る量ではなく、食料はいつも不足していました。


 僕は50人しかいない山の中の小さな村で五人家族で育ちました。まわりには、大学はおろか高校さえ卒業した人がいませんでした。それでも父と兄が読書家だったおかげで、家に本がありました。いちばん上の兄が僕を可愛がってくれて、どんどん本を買ってくれました。


 おかげで勉強が大好きになった僕は、1989年に高校に入ることにしました。共産主義なので、労働者が優先され、職業学校を卒業後には仕事が国から保障されていた時代です。大学を卒業しても給料が変わらず、友人や親戚に笑われました。「職業を身につけないなんて、バカだ」と。


 それでも僕は、ニュースなどを熱心に見ていて、共産主義が終わるんじゃないかという直感がありました。そして語学を学びたかった。外国語が話せると海外に脱出するチャンスがあるかもしれないと思ったのです。それに、もしポーランドが資本主義になったら教育が大事になると思いました。時代の変化を先読みをしようとしていたのです。


 鉄のカーテンが消滅したとき、まわりの人たちは、これでポーランドが資本主義で豊かな国になると喜びました。町の工場が民営化され、隣のドイツなどの企業が安いお金で引き取りました。それで給料が上がると思っていたら、なんと海外の企業は工場を次々クローズして、海外でつくった商品を輸入して国の市場を独占してしまいました。僕が住んでいた地域の失業率が急激に増えて、村人がほとんど仕事を失いました。物価も高くなって絶望的な状況になったのです。


 当時僕は高校3年生で、お金がないから大学に行けないと思いました。学校をやめてドイツに渡り、ポーランド人労働者を採用する農業派遣会社で出稼ぎをしました。たった1日で、父がポーランドでもらっていた1カ月分の給料(約7000円)の2、3倍を稼いだのです。


 それでもある日、病気になった母の「お前は勉強が好きだったじゃない?」というひと言で、僕はポーランドに戻って高校を卒業。その後必死に働きながら、同時並行で大学で言語学、心理学、社会学、マーケティング、ジャーナリズムと広報を勉強しました。


 3つの大学院に行って、海外の大学でも勉強しました。言語学の博士課程をやめて、千葉大学で日本人の消費行動を研究しにきました。その後社会人になっても、また仕事をしながら再び大学院に戻りました。そうしていまの仕事にたどり着いたわけです。


 ちなみに高校に行っていなかった同級生や親戚、友人はどうなったか。ポーランドはEUに入って大きく変わり、大学を出ている人たちの生活水準が高くなりました。ただ、教育を受けてない多くの人は失業し、いまも時代の変化に翻弄され続けています。


 僕をかわいがってくれた兄もその1人です。長年の失業に絶望し、「人生意味がない」と口にするようになり、僕が大学の2年生のときに事故で亡くなってしまいました。


 そんな兄の言葉を聞いて、僕は「人生に意味をもたらすしかない」と強く思いました。変化を予測することができなくても、自分なりの先読みをして、責任を引き受けて準備をする。それを自分の人生のミッションにして、仕事にしたのです。


Learn, Relearn, Unlearn



 学ぶことが大事です。ただ、知識を増やす(learn)だけではありません。自分の世界にどんな仕組みがあって、どんなルールがあるかということをしっかりわかったうえで、リスクを把握して、チャンスを探すことです。


 コウモリのように環境をスキャンして、トレンドなどを見極めることは大事です。それで自分の環境やコミュニティの常識が時代遅れで通用しなくなっているのではないかと気づいたら、学び直す(relearn)の必要があります。完全に時代遅れになった考え方、価値観や信念は手放す(unlearn)べきです。


 これらはすべてリーダーシップの範囲です。なぜなら、従来の自分の枠を超えて、新たな一歩を踏み出す勇気がリーダーシップだからです。


 日本は生産経済で成長してきました。生産率を上げるために、社員に勤勉さと服従が求められ、さらにナレッジエコノミーに発展すると、それに知能が追加の条件となりました。


 しかし、これまで大切にされてきた、勤勉さや服従、そして知能は、これからAIなどによって低コストで自動化されていきます。これからのクリエイティブエコノミーの世界では、「仕事=新しい価値をつくる」ということになります。


 さまざまな仕事が機械に取って代わられる時代、それでも人間にしか発揮できないのが情熱と創造力と率先、それこそが「リーダーシップ」なのです。



 最後になりますが、ここで僕がグーグルで特にお世話になったリーダーシップあふれる部下3人に謝意を表しつつ、本書の結びとさせていただきます。グーグルのような流動性の高い会社では、チーム体制が頻繁に変わり、所属もかなり動くのですが、たまたまそのとき東京オフィスにいた3人と僕は出会いました。


 まずは1人目は、アメリカ人のマイケル・アヌジズ(Michael Anuzis)。ミシガン生まれで、大学卒業後、会社を2つを立ち上げました。グーグルのミッションが大好きなので、入社したのですが、また新しい会社を設立したり、とても起業家精神が強い人です。


 彼は10Xやムーンショットのアイデアが豊富です。熱中すると、率先して自身の20%プロジェクトを本業に据え、1年ごとに、まったく新しい仕事をやっていました。現在はGeorgia Tech (Georgia Institute of Technology)の大学院で勉強しながら、アメリカのNPOに携わって不動産投資も行なっています。僕が入社したとき、僕の部下なのにメンターになり、毎日のようにストレートなフィードバックをくれました。モルガン・スタンレーから転職してきた僕の金融業界の癖を直してくれたり、もっとGoogley(グーグルらしい)なマネジャーになるためのサポートをしてくれました。


 2人目は長谷川綾花さん。日本人ですが、インドで生まれ、スリランカとインドで育ちました。グーグルに採用担当として入って、新規営業でバリバリ仕事をしていました。教育に興味があったので、新入社員へのプロダクト教育を担当。教えるのがとても上手なので、人材育成チームにスカウトしたのです。現在は、また営業に戻っています。


 彼女は、「無駄をなくす」や「『いまやらなきゃならない』誰もやりたくない困難な面倒臭そうな仕事やプロジェクト」に、率先して興味津々に関わっていくのが大好きです。


 そんな彼女は、2つの面を兼ね備えた素晴らしい人です。まず空気を読むのが上手で、空気を読みながら日本語でとても丁寧に話す。そして、大事なフィードバックや指摘をするときには、ストレートな、少しインドの(なま)りの入った英語で上手に空気を壊す。


 ある日彼女が、「クレープ食べに行かない?」と僕を誘って、六本木ヒルズの下にあるお店に連れて行ってくれたことがあります。そのときに、「(ピー)ちゃん、あのね」と日本語で始めて、そのあと英語でいろいろ僕のKYなところをいっぱい指摘してくれました。


 3人目は小川高子さん(かっこちゃんと呼ばれる)。かっこちゃんとは採用チームで2年間ぐらい一緒に仕事をしました。社交的なのにデータ分析が大好きで、自分でもプログラミングを学んでいました。データベース作りなど、自発的にいろいろなプロジェクトに関わっていたので、彼女も人材育成のチームにスカウトしたのです。現在はGoogle本社で採用プロセスデザインのプロジェクトマネジャーを務めています。


 発想力と行動力を兼ね備えた彼女は、Googleアジアパシフィック人事部門 〈Most Innovative & Creative〉アワード受賞者でもあります。彼女がGoogle People Analyticsの調査から学んだ「イノベーションは会議室で起きない」を実践すべく、毎週金曜日の三時半に六本木ヒルズのRigolettoに集合して、ミーティングを開催。ミーティング名も「weekly 1:1」から「Think Innovation! Meeting」に変更して、お酒を飲みながら一緒に新しいアイデアをブレーンストーミングしていました。


 3人とも性格はまったく違います。趣味も違うし、それぞれ意見も違いました。でも、お互いを尊重して、尊敬もしています。彼らがつくり出す空気こそ、まさに心理的安全性(Psychological Safety)のお手本です。誰かが何か問題を解決しようとするときは、すぐに集まって、たった15分でも討論してお互い助け合いました。その一方、みんながT型社員で話題が豊富なので、ランチのときには遊び心全開で笑い話をして、暇なときには必ずお互いにイタズラもします。


 そんな彼らとはいまだに友人です。会って相談し合ったり、ヘンな議論もします。かっこちゃんはシリコンバレーで働きながら、僕のベンチャー「モティファイ」をサポートしてくれています。あちらで趣味の音楽やダンスを通じて知り合ったエンジニアのマックスにも紹介してくれました。マイケルもビジネスモデルのアドバイスをしてくれています。



 リーダーシップを発揮するのに、年齢、肩書、性別、国籍、どれも関係ありません。誰かのために、何かのために、いますぐ手を挙げてワクワク動き出せる人こそが、本当のリーダーなのだと思います。


ピョートル・フェリークス・グジバチ


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