『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』
[著]小川大介
[発行]すばる舎
◆声かけひとつで子どもは変わる
ここでもう一度、声かけの意味と目的をまとめておきます。
声かけというのは、子どもの心とかける言葉を響きあわせることです。子どもの意識や思考を動かしてあげるためのもので、親のかかわりによって子どもの好奇心を刺激し、やる気や向上心を引き出すのが目的です。
声かけとは、子どものなかに芽生えているものに、「声」と「ことば」を渡すことで、外に向けて動き出す手伝いをすることと私は考えています。
「声」は、親から子どもに感情を伝え、安心や喜びを与え、張り合い、やる気をふくらませます。
「ことば」は、意味・内容を子どもがとらえることの助けとなり、親から与えられた言葉によって自分の内面で起きていることを認識でき、次の行動に向かう手伝いをします。
この原則を踏まえて、子どもの段階と状況にあわせて行うのが、私の考える「声かけ」なのです。
私が代表を務める個別指導教室では、声かけの技術を学習指導に用いています。
たとえば、国語の問題を解く子どもがいるとします。その子のそばで講師が一緒に問題文を読みながら、「何について書かれていた?」「どんな登場人物がいた?」「どんなできごとが起こった?」といった問いかけを行っていくのです。
講師からの問いかけがきっかけになって、子どもは自分の頭だけでは考えられなかったことに気づいていきます。そして、問題文に対する理解を深め、設問に正確に答えられる思考力を身につけていきます。
私たちは「発問応答メソッド」と呼んでいますが、この方法は学習中にかぎらず、生活全般において使えます。
◆「よく知ってるね」「すごいね」「おしえて」……
第2章でもお話ししたとおり、親御さんが意識を向けていれば、声かけのチャンスは必ずやってきます。
テレビなどで特定のことに反応している。最近、さかんに繰り返し話題にすることがある。本などの特定のページを食い入るようにジーッと見ている……。そんな様子から「きっとここだ!」と関心のありどころがわかったら、知的好奇心を刺激する会話へつなげていきましょう。
子どもの言葉や行動をキャッチし、声かけする習慣がつくと、親御さんにもいいことが起こります。子どもをやる気にさせるような「言い換え」が、自然にできるようになるのです。
たとえば、次の例のように、子どもの様子を見ながら声かけの仕方を変えていきます。
・知識が増えてちょっと自慢したいようなとき
「なになに? おしえて」
「すごいね、そんなこと知ってるんだ」
・わからなくて気になっているとき
「この辞書に載ってると思うよ、一緒に見てみようか」
・自分でやりたいけれど、やれる自信がまだないとき
「どれで調べようと思ったの? それ正解。載ってると思うよ、大丈夫」
→うまく見つけられないとしても、それは「ママの責任」と引き受けてあげるところがポイント。「あれ~? 載ってなかった?」と、一緒に調べてあげます。
「ふさいだ→ふさぐ」のような活用を知らないために見つけられなかった場合は、「そうそう。ママも昔、『なんで?』って何回も思ったな」と、自分の失敗体験を話して共感と安心を与えてあげましょう。
・知識が増え、自分で考える力を持たせたいと願うとき
「その言葉もいいけれど、もっとかっこいい言い方もできそうね」
「●●という言葉も知っておくと、すごくいいよ」
→知識欲をくすぐる声かけをします。
使う言葉を変えれば、声かけレベルはどんどんアップします。声かけの言葉をチェンジしていけばいくほど、お子さんの反応も変わっていくのです。
ただし、注意していただきたいのは、声かけは子どもを親の都合で動かすために行うのではないということです。
「せっかく買ったのだから、もっと図鑑を開いてもらわないと」「早く辞書を使えるようにしなければ」といった思いが親の側にあると、それは間違いなく子どもに読まれます。
「うまく動かしてやろう」という企みの感情が、声に乗って伝わってしまうのです。