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立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
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1 障害を受け容れても葛藤するのが当たり前

『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』
[著]立石美津子 [監修]市川宏伸 [発行]すばる舎


読了目安時間:5分
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◆健常児の姿を見ることがストレスに



 2歳で診断を受け、その後、受け容れてはみたものの、私は〈比べる病〉にかかってしまいました。


 他の子どもを見ること自体が、イコール息子との違いを見せつけられることで、ストレスの原因になりました。健常児に対して〈羨ましい→妬ましい→憎らしい〉とエスカレートし、目には大変、毒でした。



 健常の子どもがいるママ友が「うちの子、お姉ちゃんの真似ばかりして困っちゃう~」と言っただけで、「なんで困るの? 人の真似ができるなんて最高じゃない。息子なんか人に関心を持ってくれないんだから!」。


「お兄ちゃんの真似して〈うんこ〉とか変な言葉ばかり言うのよ~」と言われたら、「汚い言葉だって出るだけましじゃない!」。


「うちの子、好き嫌いが多くて困っちゃうわ」の話を聞いて、「贅沢な悩み言わないで! うちなんか食物アレルギーがあって、卵、牛乳が少しでも入っていたら死んじゃうんだから。〈命をかけた食事〉なんだから! しかも味覚が敏感で超偏食。納豆とシュウマイしか食べないんだから!」と心で叫ぶ〈完全な被害妄想の母〉に変身していました。


 他のママの存在も、健常児の存在もその会話も、すべてがうっとうしかったのです。



 私は気分が沈み、常に憂鬱で、何かというとすぐに涙が出てきて、気力が湧かなくなりました。


 そして、精神科に行きました。子どもを産むずっと前、23歳でメンタル疾患(強迫性障害)を患い入院経験があったので、さほど強い抵抗がなかったからです。



 医師は「軽い鬱状態ですね。お子さんを育てるとき大変でしょうから」と、パキシルという抗鬱薬を処方してくれました。


 ただ、それを飲んだからといって、急に元気モリモリになって「よし、プラス思考でがんばろう!」とはなりませんでした。


◆保育園での特別扱いにも被害妄想……



 朝、8時に保育園に連れて行き、夕方5時に迎えに行くと、そこには朝と同じ場所にうずくまっている息子がいました。



 他のママ達は担任保育士から「今日も元気にお友達と遊ぶことができました」と報告を受けているのに、私は担任から「今日も保育室に入れず朝からずっとここにいます」と言われました。

「私が仕事であちらこちらを訪問したり、昼にはランチを食べたり、変化のある1日を過ごしているのに、息子はずっとここにいたんだ」と思うと胸が締めつけられました。子どもと離れて少しは気分転換できるかと思ったのですが、真逆でした。



 私は幼児教室で子ども達に指導をする仕事をしていたのですが、自分の生徒とそこには居ない息子を比べたりもしました。


 胎教をし、0歳から絵本の読み聞かせをし、たくさん抱っこし、愛情をかけて一生懸命育ててきたつもりなのに、努力の甲斐はありませんでした。


 それどころか、ある意味、適当に子育てしている親の子のほうがきちんと椅子に座り、言葉をしゃべっていました。



 園の先生に「息子は自閉症です」と伝えてからは、保育士は「皆と同じことができるように」のスタンスではなく、「椅子に座っていられなくてもいい」「部屋から脱走してもいい」「オムツがとれなくてもいい」と息子を特別扱いしてくれました。


 でも、被害妄想に取りつかれていた私は、そのことすら「ダメな子だから特別に扱われている」とマイナスに受け止めてしまい、感謝する気持ちにはなれませんでした。


 自分は息子と他の子を比べるのに、他のママや保育士に対しては「お宅のいい子と息子を比べて欲しくない」と思っている、誠に身勝手な母親でした。


◆「比べる病」はなかなか消えない



 発達障害児は、見た目は健常児と同じ顔かたちをしています。だから普通の子として見られます。でも突然、走り回ったり奇声を発したりすることもあります。


 そうすると、本人にも「行儀が悪い問題の子」、母親にも「しつけのできない親」と厳しい目が向けられます。



 ダウン症の子を持つママ友は、私に「いいね、普通の子に見えるから」と言います。


 それに対して、私は「いいね、パッと見てわかるから、いちいち謝って説明する必要もないんでしょ」と言います。


 ママ友も私も、なんだか互いにすごく失礼な言葉を言いあっています。でも、信頼関係があるので、こんな会話も気兼ねなくできます。


 そして、「どちらがいい、悪いと言うのもおかしいね。お互い、ないものねだりだね」と顔を見あわせて笑いました。


 こんな障害児ママ仲間ができたことは幸せでした。



 成績だって学歴だって収入だって「上を見たらきりがない、下を見たらきりがない」です。同じように自閉症児も〈自閉症スペクトラム(連続体)〉の名称通り、ジュースの濃淡のように限りなく薄い色の軽度の子もいれば、その障害が色濃く出る重度の子まで様々います。


 重度の子を持つママは、子どもが中学生になっても高校生になっても言葉はなく、自傷行為により身体中傷だらけだったり、異食があったり、夜中に家から脱走する放浪癖があったり、そのため家から外へ出られないように中から施錠していたり、壮絶な子育てをしていました。


 そんなママは「言葉が話すことができる発達障害児が羨ましい。私なんか愛情をかけて何年も育ててきたのに、一度も子どもの声を聞いたことがない。ママと呼ばれたこともない」と言っていました。



 健常者でも、24時間テレビ(障害者の感動物語)を「世の中にはこんなに重い障害や病気を患っているのにがんばっている人がいる。自分はその点はまだマシなんだから幸せだと思わなくてはならない」と、正直そんなふうな気持ちで見ている人もいるでしょう。


 私も同様で、重度の子を持つ親からこんな話をされると、「うちなんか、まだずっとマシだ、幸せだと思わないと」と思ったりしました。


 でも、数分経つと、軽度の子を見て、「羨ましいなあ」と感じたりもしました。


 こうして〈比べる病〉は、ずっと続いていました。




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