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『あなたの「そこ」がもったいない。』
[著]菊乃
[発行]すばる舎
はじめに~もったいない女の前に現れた魔法使い~
お見合いパーティとかに行ってみればいいのかな。誰か一緒に行ってくれる人いないかな。思い浮かぶアラサーの女友だちは、男ウケを狙うような集まりの誘いを断るタイプに思える。断るだけじゃなくて、ガツガツしてるって言われるかもしれない……。
悩んだ末、私は1人でお見合いパーティに申し込んでみた。申し込みボタンを押すだけでもハードルが高く、自分らしくないことをしているようでドッと疲れてしまった。さらにその日が近づくほど、どんどん気が重くなりキャンセルしたい気分になった。
そして当日。悪い予感に従えばよかった……参加してすぐに後悔した。
調査不足で、参加したパーティは24~26歳ぐらいの女性が多かった。目の前の男性と5分間で自己紹介をし合うのだけれど、誰がどの人だったのかさえ覚えられない。あっちだって、私のことなんて覚えていないだろう。フリータイムになった時、彼らは私とは違うタイプの女性に群がっていた。存在するはずなのに私は空気より軽い存在。やっぱり、慣れないことをするんじゃなかった……。
どこにお願いしたら、私は運命の人に出会えるのだろう。シンデレラみたいに魔法使いが出てきて私に魔法をかけてくれないかな。1人自宅で物思いにふけって、ふと顔を上げると私の前に……なんと魔法使いがいた。これは、夢……?
「お疲れのようですが、姫、何があったのですか?」
「え、あなた誰? で、私のことを『姫』って、何?」
「私、魔法使いですが、何か?『魔法使いが来て魔法をかけてくれないかな』ってお思いだったでしょう、姫」
「そうなんだけど……まさか本当に出てくるなんて。っていうか姫じゃないし、私」
「まあ、細かいことは気にせずに。で、何があったのですか、姫?」
「そ、う、ね。まあ、いっか……。実はお見合いパーティに行ったのに、男性が連絡先を聞いてこないんだもの。疲れちゃって」
「だったら姫から『連絡先を教えていただけませんか?』と笑顔で聞けばよろしいのでは?」
「え、この私が? わざわざお見合いパーティに自分から申し込んで、自分から足を運んでやったのに。それだけでも大変だったのに、さらに私から連絡先を聞けというの?」
「その男も『王子初心者』なのでしょう。お姫様は広い心で万人に接するものです」
「そうなのね、しょうがないわね。そうしてあげようかしら」
「まぁ~、お姫様は随分と上から目線でございますね。何年もデートしていないのに」
「え? 今、何て?」
「いえいえ、何でもございませんよ、ほほほほ~。ではがんばってくださいませ~」
数日後、イライラしている私の前にまた魔法使いが現れた。
「あ~、もう疲れちゃった。何もかもがイヤになっちゃう」
「さようでございますか、姫。今度は何があったのですか?」
「男性のデートの段取りが悪くてイライラするの。『今度またご飯でも行こう』ってLINEをよこしたのはあっちなのに。日程も店もいつまでたっても決まらないの」
「そうでしたか。それでは姫はどうしてほしいのですか?」
「決まってるじゃない。『いつだと都合がいい? 何が食べたい?』って聞いてくれて、お店を予約してくれなきゃ。王子はリードするものでしょう。私の王子様は彼ではないようね」
「そんな! お会いして間もない方が姫の要望を察するのは無理でしょう。物語に出て来るいろんな姫君も、ほしいもののヒントを与えているというではありませんか。姫は、何人から求婚されたのですか? え? 0人? まぁ~、聞いてしまって申し訳ございませんでした。では姫から『私は●日と▲日なら空いてるよ。ここのお店に行きたかったんだけどどう?』と連絡してみてはいかがです?」
「え! この私が!? 向こうから誘ってきたのに、私から聞けというの? ありえない!」
「何かご不満でも?」
「私は、リードしてほしいの!」
「それでしたら、次会った時に『今度は●●君から誘ってもらえるとうれしいな』と言ってニッコリ笑えばよろしいのでは?」
「……そうなの? わかったわよ。そこまで言うならぁ~、やってあげてもいいわよ」
「相手に姫の扱い方を教えるのも姫の役目です。『私はこうしたら喜ぶよ』って。さっさと嫁いだ姫は自分の要求を伝えてますよ」
「そうなのよ。あれやって、これやってってワガママ言う女ばかり結婚するの! そういう女にかぎってスマートにリードしてくれる男を捕まえてるのよ」
「姫、それはその姫が王子初心者を褒めて伸ばして教育しただけです。姫も充分、別の意味でワガママですよ。要求する女性はまだカワイイ。その点、姫は要求はしないけれど察しろ、空気読めと思っているのでしょう」
「……。まぁ、そうね。でも、王子様って待っていたら来てくれるものじゃないの?」
「姫。それだから『白馬の王子様』より先に、『三十路』が来るのではないでしょうか? ところで、その靴って学生時代と同じ店で買ってませんか。まずは自分をお姫様として扱ってくださいね。忙しい殿方が休日に会いたいと思える女性にならなければなりません。自分がやることやらないのに相手にばかり要求するなんて。本当に何様なんでしょうね~」
「あ~うるさいわね。そうよ、私はお姫様よ!」
「やっと自分をお姫様と認めましたね。姫は長いこと呪いにかけられていたのですよ『マジメだったら報われる』『いい子にしてたらいいことが起こる』という呪いです」
「何それ。……その呪いはどうやったら解けるの?」
「呪いの解き方は、この本の中です」──。
そこで目が覚めた。「全部夢だったの?」……。
しかし、手もとには本があった。
『あなたの「そこ」がもったいない。』
本書の注意点
・本書の情報は、2017年1月時点のものです
・本書に掲載されている商品名などは、一般的に商標登録されているものです。
ただ、煩雑さを避けるため、本書では、(C)や(R)マークなどは省略しております