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反知性主義と新宗教
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生き方・教養
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右傾化をもたらすアメリカの反知性主義

『反知性主義と新宗教』
[著]島田裕巳 [発行]イースト・プレス


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 第一章では、アメリカの反知性主義にプロテスタント福音派の信仰が大きな影響を与えていることを見てきた。


 この福音派、ないしは福音主義は、ファンダメンタリズム、つまりはキリスト教原理主義と呼ばれることもあるし、新宗教右翼やキリスト教右派などと呼ばれたりもする。


 このように呼び方が一定していないのは、それぞれが他称で自称ではないからだ。福音派に分類される人々は、自分たちをただのキリスト教徒あるいは本物のキリスト教徒だと考えているはずである。


 ここでは便宜的に福音派という呼称を使って説明するが、その特徴は聖書に書かれていることを文字通りに信じて、進化論を否定し、人工妊娠中絶に反対するというだけにとどまらない。


 それ以上に重要な特徴は、福音派が終末論を信じていることにある。


 新約聖書の終わりの部分には、「ヨハネの(もく)()(ろく)」が収められている。そこでは、すぐにでも世の終わりが迫っており、その際にはイエス・キリストが再臨し、最後の審判が行われ、天国に召される者と地獄に落とされる者が定められると説かれている。これが、キリスト教の終末論であり、福音派のみならず、キリスト教全体の信仰の核心に位置づけられている。


 キリスト教が誕生した当初の時代には、世の終わりはすぐにでも訪れると考えられていたが、現実にはそうした事態は訪れなかった。そのため、強烈な終末論は背景に退き、むしろ教会が地上での救済を担うようになっていく。


 しかし、社会に危機が訪れるたびに、くり返し終末論は息を吹き返してきた。


 福音派の信仰の核にも、この終末論がある。その特徴について、(もり)(こう)(いち)は『宗教からよむ「アメリカ」』((こう)(だん)(しや)選書メチエ)において、次のように説明している。


 森は、ファンダメンタリストという言い方を使っているが、彼らは、「ヨハネの黙示録」などの記述から、サタンの陣営とキリストの陣営とのあいだで終末戦争が勃発するととらえ、その戦争を「ハルマゲンドン」と呼んでいる。


 そのハルマゲンドンが戦われている際に、神の(たみ)であるファンダメンタリストは空中に引き上げられ、そこでキリストと出会う。そして、ハルマゲンドンが過ぎ去るまで空中にとどまり、戦いが終わったとき、キリストとともに地上に降り立ち、そこから神の国を建設するというのである。


 重要なことは、まだ冷戦が続いていた時代に、ハルマゲンドンが、ソ連(現在のロシア)を中心とした共産主義の陣営とアメリカを中心とした自由主義の陣営のあいだで戦われる第三次世界大戦をさすものと考えられていた点である。森は、ファンダメンタリストの支持によって当選したロナルド・レーガン大統領が、ソ連のことを「悪の帝国」と呼んだことを指摘している。それは、「ヨハネの黙示録」のサタン陣営をイメージさせるというのである。


 ファンダメンタリストなり、福音派なりは、第一章でふれたリバイバリズムに遡るわけで、その歴史は三〇〇年近くに及んでいる。


 リバイバリズムにおいては、最後の審判を経ることで天国へ行けるよう、自らの罪を悔い改めるべきことが強調された。リバイバリズムの波に飲み込まれた人びとは、それまで自分たちの生活を成り立たせることに精一杯だった開拓民であり、信仰に関心を持たず、その日暮らしの享楽的な日々を送っていた。リバイバリズムは、そうした生活がいかに罪深いかを強調し、彼らを回心へと誘ったのである。そこにおいては、最後の審判は、悔い改めの必要を納得させるために持ち出されたものだった。


 ところが、冷戦の時代には、ソ連との戦争が現実味を帯びたところから、むしろ最後の審判を引き起こす世の終わりへの関心が高まり、ファンダメンタリストは、それに強い危機意識を持つようになったのである。


 アメリカでは、一九五〇年代に「マッカーシズム」、いわゆる「赤狩り」の嵐が吹き荒れ、共産主義者と目された政府の職員やメディアの人間が次々と告発されるという出来事が起こる。ホーフスタッターは、『アメリカの反知性主義』において、このマッカーシズムを反知性主義の一つとして取り上げている。


 このように、アメリカの反知性主義には、共産主義を否定する右翼的な傾向があり、そこから宗教右翼、宗教右派としてもとらえられるわけである。


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