女の勘は鋭い。
これは古くから言われてきたことだが、果たして単なる俗説にすぎないのか? あながちそうとは言いきれないとわたしは思う。それは俗説どころかきちんと説明のつく、女性たちに共通の特徴だといえるだろう。もっと極端にいえば、勘の鋭さこそが女性たる所以なのである。
女の勘の鋭さを示す実例として、必ずといっていいほど引き合いに出されるのが、男の浮気を見破るケース。
夫が外で女性と浮気をして家に帰ってくる。もちろん、夫は何食わぬ顔をしているのだが、妻は夫が浮気を隠していることを直感的に見抜いてしまう。こうして、ほとんどの場合、見破られまいとする夫の努力も空しく、浮気が妻にあっさりとばれてしまう。
どうして女性たちは、そんなに勘が鋭いのだろうか? 自分自身が興味をもったこの問いかけに対する答えを見つけるために、わたしは本書を書こうと思い立った。そして、彼女たちの勘の鋭さに関心をもった理由の一つが、わたしのこれまでの経歴にある事実にも少しだけふれておきたい。
わたしは二十代から四十代にかけて、主婦向け雑誌、若い女性向け雑誌、そして十代の少女向け雑誌の編集者を務めてきた。そして、出版社を辞めてフリーランスの物書きとなってから現在まで、女性向けの自己啓発書を数多く書いてきた。雑誌編集者のときは女性たちが興味をもつ企画を考え、物書きになってからは彼女たちに受け入れられる内容と文章を工夫してきた。
そうした経験からわたしは、女性たちのものの考え方の本質的な部分を知った。それは、物事を極めてシンプルに、男よりもはるかにシンプルに考えることだ。さらに、そのシンプルさが、彼女たちに共通の勘の鋭さを生んでいるのだとも気づいたのだった。だから本書は、仕事の対象として長年女性を見てきたわたしにとって、集大成の意味をもつといっていいだろう。
ついでに記しておくと、本書には実用書的な工夫もこらしてみた。読者のためになるよう、女性に対するときのアドバイスを各項目の最後につけた。それも含めて、本書があなたのお役に立つことが、わたしにとって大いなる喜びであるのはいうまでもない。
二〇〇八年五月
赤羽建美