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封印作品の謎 テレビアニメ・特撮編
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エンタメ
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第一章 闇に消えた怪獣 『ウルトラセブン』第一二話「遊星より愛をこめて」

『封印作品の謎 テレビアニメ・特撮編』
[著]安藤健二 [発行]彩図社


読了目安時間:1時間1分
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 面子「シゲちゃん…最近 スカオ君学校来ないネー」


 シゲオ「スカオ君?」


 面子「ホラ! アソコの席に座ってた オモシロイ事たくさん言う人…」


 シゲオ「何言ってんのさ! あそこはずっと叶(弟)の席じゃないか!」


 面子「ナンデスト ヒロ美ちゃんは知ってるよね? スカオ君!」


 ヒロ美「…さあ 存じ上げませんが…」


    (清野とおる「ホントのウソ~ハラハラドキドキ・外伝~」 『ヤングジャンプ』増刊『漫革』二〇〇四年三七号 集英社)


消された思い出



 仲のよかった友達が、ある日突然いなくなった。しかも、その人のことを周囲に聞いても、その人の存在すら覚えていない。「初めからそんな人はいなかった」と言われ、「頭、大丈夫?」と逆に心配される始末……。こんなシーンがSFドラマではよく出てくる。実は、その友人は宇宙人であり、自分の星に帰るとともに周囲の人の記憶を(かい)(ざん)してしまった……なんていうのがありがちなオチ。だが、これと同じような話が現実に起こっている。テレビで放映されていた特撮番組のうち一話だけが、その存在がなかったことにされているのだ。


 それが、『ウルトラセブン』第一二話「遊星より愛をこめて」だ。初放映から三年後の一九七〇年以降、一度も再放送されていない。一一話の次に放映されるのは一三話。単行本、雑誌、ビデオ、DVD、あらゆるメディアでも同じ扱いだ。まるで一二話という回そのものが初めから存在しなかったかのようになっている。仮に触れていたとしても、「一二話は、欠番とする」「一二話は現在放映されていない」といった短い一文があるだけ。なぜ欠番となっているかが説明されることは、まずない。


 六六年の『ウルトラQ』から、二〇一六年の『ウルトラマンオーブ』まで、世代を超えて根強い人気を誇るウルトラシリーズ。初放映当時の子どもたちが大人になり、今度は自分の子どもと一緒に見る。世代をまたぎ根強い人気を誇る、円谷(つぶらや)プロの看板商品だ。宇宙から来た巨大ヒーローが、地球を脅かすさまざまな怪獣たちと戦うという斬新な設定は、当時の子どもたちの人気を博し、その後のテレビの巨大ヒーロー物の先駆けとなった。多種多様な怪獣や社会問題、そして人間ドラマを巧みに織り込んだストーリーは多くの子どもたちに夢と感動を与えた。シリーズ開始から五〇年がたった今でも、DVDやビデオ、出版物とメディアを替えながら販売され続けている。もはや国民的なヒーローと言っていいだろう。この栄光に彩られた番組の歴史の中で唯一、『セブン』一二話だけが欠番となっている。

『ウルトラセブン』はウルトラシリーズの第三弾として、一九六七年一〇月からTBS系で放映された。「近未来の地球は幾多の星の宇宙人に狙われていた。人類は地球防衛軍を結成。精鋭部隊のウルトラ警備隊が侵略者に戦いを挑む」という設定。「宇宙からの侵略」がメインテーマとなっており、前作『ウルトラマン』よりもミステリアスで大人向けの印象が強い。初放映当時は、後半になるにつれて視聴率が下がるなど人気はぱっとしなかった。だが、時代が過ぎ再放送が繰り返されるにつれ、どんどんファンが増えていった。現在では『セブン』をウルトラシリーズの最高傑作とする特撮ファンも多い。「こんな名作なのに、なぜ一二話だけ見られないのか」という疑問の声は常にある。「禁断の一二話」は特撮ファンの間で、一種の都市伝説のように語り継がれてきた。


 しかし、商業誌で一二話に触れることは、特撮界で最大のタブーとなっている。『GON!』や『BUBKA』といったゴシップ系の雑誌に記事が載ることはあっても、通常の特撮雑誌や一般誌が取り上げることは、ほとんどない。仮に一度は取り上げたとしても、その本自体がなくなってしまったり、増刷版では削られてしまうのだ。


 一例を挙げよう。九二年にJICC出版局(現・宝島社)から出版された別冊宝島『怪獣学・入門!』。これは日本の特撮映画やテレビ番組の怪獣に秘められた思いを詳細に研究した革命的なムックだった。この本の初版の巻末には、“「幻の12話」を20年間追い続けた男”という二ページのコラムがあった。封印までの経緯を商業出版では初めて詳しく説明したコラムだったが、第二版以降、そっくり消された。コラムのあったはずのページは「ゴジラCOMICの逆襲」という同社の漫画の広告に差し替えられていた。あたかも、一二話が『ウルトラセブン』の歴史から抹消されたのと同じように……。このムックの編集者で、後に雑誌『映画秘宝』の編集長を務めた映画評論家の(まち)(やま)(とも)(ひろ)はこう話す。

「あの本は、怪獣の写真とかで円谷プロの作品を使っているので、二刷目でも一二話の記事を掲載し続けるなら、二刷目以降の写真掲載の許可を出さないと言われたんですよ」




 一二話を長年研究している、あるファンサークルのメンバーも、一度は一二話に関する商業出版を志したが断念した。

「今までの類似本の企画を調べた結果、あまりにシビアなことが絡みすぎるからポシャっちゃったんですよ。まず版権がクリアできない。あと、出版社がそれ以降、円谷の版権を取れなくなる。それにライターも円谷関係の執筆活動をできなくなるんです」


 こうした事情があるので、『セブン』一二話について詳しく触れた本は、封印から四〇年以上を経た今も一冊も出ていない。だからこそ、私が封印作品の本を書こうと思い立ったときに、真っ先に取材を始めたのが『セブン』一二話だった。


 ただ、商業ルートでは情報がシャットダウンされているとはいえ、ファンの間では草の根的な情報交換が盛んだ。中でも、盛んに商品が売買されているのがネットオークションだ。海賊版のDVDやビデオ、一二話に登場する宇宙人「スペル星人」のメンコやカルタ、ブロマイドなどの玩具や、放映当時に掲載された雑誌。さらに、一二話を扱った同人誌、スペル星人の自作フィギュアに始まり、なんと人が入れる等身大の着ぐるみまでが売り出されている。封印されたことが原因で“一二話市場”とでも言うべき、ブラック・マーケットが生まれているのだ。

12話会」という特撮サークルが作った『1/49計画』という同人誌がある。一冊につき約三〇〇ページにわたって、フィルムストーリーから、登場する宇宙人の紹介、脚本と、一二話に関するあらゆる資料が詰まった力作だ。同人誌即売会「コミックマーケット」で約三〇〇〇円で発売されたが、ファンの間で大人気となり、ネットオークションでは一冊三万円以上のプレミアがついた。


 欠番から数えて、もう三十数年。封印された作品は多いが、『セブン』一二話ほどのインパクトを持ち、いまだにファンの垂涎の的になっているものはない。ファンの執念が、歴史から消された怪獣を闇の淵からよみがえらせている。


 中でも、かつて特撮ファンが血眼になって求めていたのが、一二話の海賊版ビデオだ。八三年ごろにどこからか流出。全国の特撮ファンの間でダビングを重ねられ、高価で取引されていたという。このビデオをめぐり、特撮ファンの間では伝説となっている話がある。三〇代の特撮ファンはこう話す。

「僕がまだ高校生の八六年ごろ、『テレパル』という雑誌にオタク訪問のコーナーがありました。そこで、ある特撮オタクが一二話を持っている、と書かれていたんですよ。それで『テレパル』に連絡先を教えてもらったんです。その人には『友達のビデオだから』と断られましたが、後日、その友達って人から夜中にいきなり『一二話のビデオのことで相談したい』と電話がありました。それが(みや)(ざき)(つとむ)だったんです。新聞に出た宮崎勤の脅迫文を、僕が受け取った封筒と並べて見比べたらまったく同じでした。僕が脅迫文を見たときに、早めにこの手紙の主を犯人と気づいていたら、もう一人ぐらいは死ななくてよかったのかなって後悔しましたね……」





 八八年から八九年にかけて幼女四人を相次いで誘拐、殺害し逮捕された宮崎勤。ビデオテープと無数の漫画が天井まで積み重ねられた宮崎の部屋は、メディアで繰り返し報道され、“オタクの犯罪”として有名になった。負のイメージのオタクの原点とも言える宮崎勤が、一二話の海賊版ビデオの流通で大きな役割を果たしていた。この特撮ファンはこう続ける。

「たぶん、宮崎版のビデオは広く流通していると思いますよ。日本中につながっていたらしいですから。宮崎勤のテープというのは流通のかなり初期段階だったんだと思います。周りで流通してないし、持っている人もいなかったですから……」


 このように八〇年代の時点で特撮ファンの間では、一二話欠番は周知の事実だったらしい。しかし、私は当時まったく知らなかった。小学校に上がる以前、ウルトラシリーズに出てくる怪獣が大好きだった私は、怪獣図鑑をページが擦り切れるまで読み漁っていた。怪獣の名前はほとんど暗記していたが、その怪獣図鑑で『ウルトラセブン』の一二話だけが飛ばされていたことには、十数年間まったく気づかなかった。一二話が欠番となっている事実を私が初めて知ったのは、九八年ごろのことだった。神戸連続児童殺傷事件がきっかけで知り合った特撮ファンの男性が、友人の掲示板でそのことに触れていた。「へえ……まさかセブンにも封印されたエピソードがあるなんて……」。私は新鮮な驚きを感じた。


 ネットでさらに調べてみると、どうやらこの回に登場する怪獣の姿が「被爆者を連想させる」と問題になり、欠番となったらしい。真っ白な全身、目と口らしきものがわずかに見える程度の無表情な顔、体のあちこちにケロイド状の火傷(やけど)のようなものがついている。そんな不気味な宇宙人「スペル星人」の姿はアメリカの特撮専門のサイトで見ることができた。どうやら、特撮ファンの間では広く知られている話のようだ。裏ビデオが数万円のプレミアがついて流通しているとのこと。「いつか一回ぐらい見てみたいな」と思ったが、そのときは入手するルートも知らず、それっきりだった。


 それから数年後、取材するために再び、ネットを調べてみた。以前と違って異なるパソコン同士のファイルを共有するP2Pソフトが普及していたので、それを使ってみる。「WinMX」「Winny」といったものがそれだ。一般に商用ソフトや音楽データを交換し合う人が多いため、悪の温床的なイメージで捉えられがちで、現在では逮捕者も出ている。


 だが当時はまだ牧歌的な時代で、多くの人が無邪気にファイル交換にいそしんでいた。現在では入手が難しくなった映像作品なども流通しており、何気なく「ウルトラセブン第一二話」とキーワードを入れると簡単にファイルをダウンロードすることができた。震える指を抑えながら動画を再生した。


 ダビングを重ねたせいか、画質は恐ろしく悪い。色はモノクロに毛が生えた程度だし、細部もほとんどつぶれてしまっている……。それがいかにも「幻の作品」っぽくて、ちょっとドキドキする。どういう作品なのかは辛うじて判別できた。大まかなあらすじはこうだ。



 未来の地球では核実験が禁止され、放射能汚染も過去の出来事となっていた。

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