私を置いていかないで
一八歳の女性が、父親につき添われて相談に来ました。彼女は診察室に入るなりわーっと泣き崩れ、一向に泣きやみません。それでやむを得ず、父親に話を聞きました。
彼女の両親は、三年前に離婚しました。離婚する前から、両親のけんかは絶えなかったのですが、母親が家を出ていった日は、特に激しく両親が言い争っていました。そして、彼女が引き止めるのも聞かず、母親はそのまま家を出ていきました。泣き叫んで母親を追いかけた彼女は、慌ててマンションの階段を踏み外し、転倒してしまいました。しかし、母親は彼女を振り向きもしないで行ってしまったのです。
このとき彼女は足を骨折しましたが、それよりも精神的なショックのほうが彼女をより大きく傷つけました。