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リクルートを辞めたから話せる、本当の「就活」の話
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3時間目 何も知らない学生たち

『リクルートを辞めたから話せる、本当の「就活」の話』
[著]太田芳徳 [発行]PHP研究所


読了目安時間:26分
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 電車に乗っていたある日のこと。吊り革につかまり電車に揺られる私の目の前で、二人組の学生が、エントリーシートには何を書けばいいだろうかと話し合っていた。盗み聞きをしていたわけではないが、嫌でも二人の会話が私の耳に入ってくるのでしばらく聞いていた。
「志望理由、何がいいかな」
「まあ、将来性がある、とか? そういうのがいいんじゃない? 先見性があると思われるし、()めてるわけだから」
「ああ、それいいね。使わせてもらうわ」

 学生がノートパソコンにその内容を打ち始める。私は思わず声をあげそうになった。
(ああ、ダメダメ! そんなこと書いたらダメ!)

 志望理由としてはいかにも真っ当に聞こえる「御社の事業には将来性がある」。しかしそれをまともだと思っているのは学生の側だけだ。企業の人間の心の内を代弁するとこうなる。
「はぁ? なんで学生なんかに将来性がある、なんて言われなきゃいけないんだよ!」

 よくよく考えてみてほしい。「御社の事業には将来性がある」という言葉は、言葉遣いこそ丁寧だが「上から評価目線」だ。そもそも将来のことなんて、誰にもわからない。もしその会社の将来が本当にわかっているのであれば、働かなくてもそこの株を買いまくればいい。

 このように、相手の立場、自分の立場をよくわかっていないまま就職活動に突入してしまった学生は非常に多い。何も知らないから、キャリアセンターで言われたこと、雑誌に書かれていること、ネットに書かれていることをそのまま鵜呑(うの)みにしてしまう。実際に働いた経験がないのに、不確かな伝聞情報だけが増えていくのだ。


 この章では、学生たちがまだ気づいていない、学生たち自身の問題について取り上げたい。


積極性は、相手から見える行動で示すもの


 私がある大学で就職セミナーの講義をした時のことだ。

 参加人数の割に大きい教室で行われたこともあって、いくつか空いている席があった。
「前のほう空いてるよ。こっち来なよ」

 私は親切で言っているつもりだった。学生たちもいろいろな予定がある中で、私の話を聞きに来ることを選択してくれた。それは嬉しいことだし、せっかくだからお互い顔のよく見える距離で話をしようじゃないか、という気持ちだった。

 にもかかわらず、何人かの学生は後ろの席から動こうとしない。私は(あき)れ果てた。

(これから社会人になるための話を聞きに来ているのに、どうしてこんな消極的な姿勢なんだ……。10代のガキみたいにカッコつけているつもりなのか?)


 正直なことを言えば、私自身にもそういう時代はあった。授業に積極的に参加というのはなんとなくカッコ悪いと思っていたので、後ろの席から授業風景を気怠(けだる)い様子で眺めていた。高校時代の「くだらない活動」である。

 だからなのだろうか。彼らの姿が未熟だった頃の自分と重なり、とても残念に思えた。私は彼らにこう言った。

「それ、社会人の世界に入ったら、ものすごくダメな人に見えるよ」


 社会人になれば、なんらかの勉強会に顔を出すこともあるだろう。その時に、後ろの席に座っている人はどう思われるだろうか。

 中学生や高校生なら「思春期の恥じらいはかわいらしいものだ」と思われるだけかもしれないが、社会人でそれは、「全く聞く気のない人間」として見られてしまうのだ。しかも、聞く気がないのに、なんとなくこれは聞いておいたほうがいいかもと中途半端に保険をかけて、「聞きたくないけれど、聞かないと」と自分のジレンマも処理できない無能な人間に見えるのだ。また自分の貴重な時間を管理できない人間にも見える。


 しかしここまで言ってもわからない学生にはわからない。中には寝てしまう学生もいる。外部講師で招かれている立場とはいえ、私は企業から来た人間として学生に注意せざるを得なかった。
「君一人が寝ているせいでここの大学の学生全員が、やる気のないダメ人間に見えてしまう。私がこのまま帰って、あそこの大学はダメだったよ。うちはあの大学から採用しないほうがいいよ。って人事部に言いふらしたらどうするの?」

 大学ではこのように注意されることはないと思うが、この学生も注意を受けていなかったのだろう。私がそう話すと(あわ)てふためきながら謝り、翌週からは一番前の席で話を聞くようになった。

 こういう学生は一部だけだと思うかもしれないが、こちらから見れば、それで全体を評価してしまうものだ。社会の評価とはそういうものだ。


 講義や説明会、会議に参加する時は、少しでも前のほうに座って話を聞く。これが「積極的に関わろうとしている」という態度を示す行動だ。

 よく「もっと積極的になれ」と言われることがあると思うが、これは相手に「私はあなたの話が聞きたいんだ」という気持ちを「行動」で見せろ、ということなのだ。
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