『タレントだった僕が芸能界で教わった社会人として大切なこと』
[著]飯塚和秀
[発行]ゴマブックス
テーブルに残った小物のことで厳しく叱責
楽屋で待機すること約1時間。いよいよ僕が出演するシーンの撮影が始まるとの連絡を受けました。緊張を隠せないままエンドゥと一緒にCスタジオへと移動します。
最初の出番は、母親役の大御所KMさん、お姉さん役のNYさん、それに僕との3人で、家族団らんをしているシーン。ここでは僕の台詞はなく、おふたりと一緒にテーブルを囲んで食事をするという設定でした。
スタジオの中に入ってみると、そこには前のシーンを撮り終えたばかりのKMさんがいました。さっきメイクルームで見たときとは違う、いつもテレビで見ているとおりのKMさん。なんともいえない強烈なオーラを漂わせています。
いよいよ、ちゃんとしたかたちでの初顔合わせです。
「……おはようございます……」
僕は心底、緊張していました。強ばった顔つきで挨拶をしたものの、KMさんに圧倒され、おそらく言葉が前に出ていなかったんだと思います。KMさんは返事をしてくれないまま、目の前を通りすぎていってしまいました。