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老けたくなければファーストフードを食べるな
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第五章 AGEは体の中で何をしているのか

『老けたくなければファーストフードを食べるな』
[著]山岸昌一 [発行]PHP研究所


読了目安時間:54分
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コラーゲンのAGE化



 体内でタンパク質が糖化して最終物質AGEになる現象は、すべての組織で起きる可能性があります。年をとればとるほど、体温で加熱されたり、ブドウ糖にさらされる時間が長くなりますから、体内のいろいろなところのタンパク質がAGE化していく。

 今まで漠然と老化は、体の部位別にバラバラに起こると考えられてきましたが、そうではなかった!

 皮膚にたるみやしみが生じ、血管は硬化し、目は白内障になって、脳ではアルツハイマー病が起きる。それらはみな別々の要因で起きると考えられていましたが、すべてAGEが関係している可能性があるわけです。
「タンパク質のAGE化が問題だった」、という考え方は画期的でした。

 この章では、AGEが体内で具体的にどんなことをしているのかを見ていきたいと思います。


 体内の組織は細胞も含めてさまざまなタンパク質でできています。そのタンパク質の寿命が長くて、入れ替わらないものほど、ひとたびAGE化すればずっとそこにとどまってさまざまな悪影響を与えつづけます。

 たとえば血液中のタンパク質であるヘモグロビンは、四カ月で新しいものに入れ替わってしまいます。AGE化されたヘモグロビンも、やがていずれは代謝されていきます。

 ところが目の水晶体のように、一生入れ替わらないタンパク質だと、AGE化したものは、そこに生涯とどまって、周りの組織に影響を与えつづけるのです。


 体内で寿命が長いタンパク質というと、コラーゲンが挙げられます。人間の体をつくっているのは主にタンパク質ですが、そのうちの三割がコラーゲンです。

 このコラーゲンのAGE化が、体内で影響を与えている可能性は大です。

 私たちはコラーゲンと聞くと、すぐ皮膚の弾力性などを連想しがちですね。でもコラーゲンは皮膚だけではありません。腱や骨、軟骨、血管や脳など体内に幅広く存在しています。

 しかし、まずは年をとっていくと、だれもが気になる皮膚の話から始めましょう。


皮膚に与える影響──たるみ、しわ、しみ、そばかす



 皮膚にAGEが顕著に与える影響は、たるみ、しわ、しみ、そばかすなどです。これらは「病気」ではありませんが、「老化現象」としてとらえられています。

 もっとも、これから述べていくさまざまな「病気」も、AGE化によってタンパク質や細胞が変化して、本来の機能を失うものなので、大きく言えば「老化」といってもいいでしょう。

 AGEが老化物質といわれるのも、体のさまざまな組織がもともとの機能を失い、衰えていくことにからんでいるからです。


 皮膚の老化の原因は皮膚のタンパク質であるコラーゲンが長い間、体温で加熱されたり、太陽の紫外線で破壊されたりして、AGE化されることによって起きます。

 そしてひとたび変質して弾力性を失うと、たるみやしわなどの老化が起こるのです。

 また長く体内で加熱され“調理”されることで、「メイラード反応」も生まれます。いわゆるしみ、そばかすです。たしかにしみ、そばかすはフライパンで熱せられたような茶色をしていますね。

 ここに太陽光線が加わると、AGE化はさらに促進されます。太陽光線は紫外線を含んでおり、酸化反応を促進させます。酸化反応は糖化反応とあいまって、一気に「メイラード反応」を推し進め、AGE化を加速させるのです。

 実際、二〇〇一年に、加齢とともに人の皮膚にAGEがたまることを証明したものがあります。また紫外線の照射が多いほど、AGE化が進むことを明らかにした論文もあります。

 日焼けをすると、皮膚の老化が早まるのはよく知られていますが、AGEや「メイラード反応」の観点から見ていくと、そのしくみがよく理解できます。


 皮膚で面白いのは二〇年ほど前に発表されたラットによる実験です。若いラットをカロリー制限して育てると、その後、食事制限をしなくても、皮膚のAGE化や色素沈着を防げるというのです。

 まさに「記憶」の作用がここでも見られます。

 ある一定の期間、きちんと食事を管理すると、その後、食事を元に戻しても、ふつうに食事をお腹いっぱい食べていたラットより、皮膚の老化が防げる。

 さらに全生涯を通じて、カロリー制限したラットは、皮膚のAGEが減り、色素沈着も抑制できる上、寿命まで延びた、という実験結果があります。

 ここで注目したいのは、皮膚の老化と寿命の関係です。

 皮膚が若々しいラットは、寿命が長い。ということは、お肌の老化が進んでいる人は、全身の老化が進んでいる。そして寿命が短いといえるかもしれません。

 皮膚の状態で体の老化の程度やひょっとすると、寿命まで推測できる時代が来るかもしれません。

 いずれにしても、肌がぷりぷりでつやつやなのは、女性なら憧れるのは当然のこと。若さの象徴であり、活動的で魅力的な人生を歩んでいる証拠といえるのではないでしょうか。なんとか、皮膚のAGE化を防いで、若々しく見られたいものです!


 次に、同じコラーゲンでも、体中の血管や骨の細胞の足場を組み、これらを支えているコラーゲンを見ていきます。これらのコラーゲンがAGE化すると、血管や骨に悪影響を及ぼします。


血管に与える影響──動脈硬化



 血管を例にとって、AGEが何をしているのか、お話ししましょう。

 血管は内側に内皮細胞があって、その周りをぐるりとコラーゲンが囲んでいます。その外側を平滑筋細胞という細胞が囲み、さらに外側を外膜がおおっています。

 コラーゲンは内皮細胞と平滑筋細胞の間で、クッションのように足場を組み、血管にしなやかな弾力性を与えています。ここがAGE化して、糖のこぶだらけの糖化物質AGEコラーゲンになるとどうなるか。

 コラーゲン自身がクッションとしての機能を失うだけでなく、性格も一変して、いままで守ってきた内側の内皮細胞や外側の平滑筋細胞に攻撃を仕掛けるようになります。


 まず血管の内側、血管内皮細胞に対しては、血中に流れているLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が内皮細胞内にしみこみやすいような環境をつくってしまいます。

 LDLコレステロールの侵入を受けた内皮細胞はダメージを負い、炎症反応が起きる。すると、その「SOS」に反応して血液の中から白血球のマクロファージがやってきます。

 そして脂まみれのAGE化したLDLコレステロールを次々と食べる、食べる。

 マクロファージに食べられたコレステロールの残骸は、じゅくじゅくした(かゆ)のような状態になって盛り上がります。これを「プラーク」といいます(図5)。



 要は、血管の表面に脂の固まりが乗っかっているような状態を想像してください。

 やがてその薄い皮膜がプチッと、(うみ)が破れるように破裂する。血管が破れたのかと勘違いした血小板が大あわてでやってきます。そして血を固めて破れをふさごうとする。

 結局は、血流がせき止められてそこに血の固まりができてしまいます。これが血栓です。このことが、心筋や脳に栄養を与えている血管に起こり、その血管の心筋細胞や脳への血液が遮断される結果、細胞が死んでしまう病気、これが心筋梗塞や脳梗塞です。

 心筋も脳の細胞も一般的には、ほとんど再生できません。つまり、死んでしまったら、そのまま、元には戻らず、永久に障害を残します。


 一方、AGE化したコラーゲンは血管の外側の平滑筋細胞にも攻撃を仕掛けて悪さをします。あとで説明しますが、平滑筋細胞を刺激して、細胞の数をどんどん増やしてしまう。血管の外側にある平滑筋細胞が異常に増えて厚くなるので、血管が厚く硬くなります。これが動脈硬化です。

 つまり血管のコラーゲンがAGE化すると、コラーゲンとしての機能を失うだけでなく、他の細胞を攻撃する破壊者になる。

 血管の内皮細胞に対してはLDLコレステロールを呼び込んで血管壁を破壊する働きをするし、外側の平滑筋細胞に対しては数をどんどん増やして、血管を厚くする。

 一方では細胞を破壊し、もう一方では細胞を増やす。まったく相反する働きをするとんでもないモンスターに変身するのです。みなさんは、「血管の細胞は破壊されても修復されるんじゃないか?」と思われるかもしれません。しかし、AGEは、血管の修復系も破綻させてしまいます。まるでブレーキが壊れ、一方ではアクセルをふかす暴走自動車のようなものです。

 また、AGE化したコラーゲンは、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールをさらに酸化、AGE化させ、いっそう悪玉化させます。さらに血栓をつくりやすくすること、一度できた血栓を溶かしにくくし、血液の流れを長時間せき止めさせることなども知られていますので、もう、やりたい放題です。


AGEを暴れさせる鍵穴受容体RAGE



 ここで少し難しい話をします。なぜタンパク質の糖化物質にすぎないAGEが、モンスターのようにとんでもない暴れ方をするのか、ということについてです。

 いままで触れませんでしたが、実はAGEが細胞に対してアタックをするようになるのは強力なサポーターがいるからです。悪の支援組織がいるわけです。

 それがAGEの受容体「RAGE(receptor for AGE)」です。

 さきほどお話しした血管の外側の平滑筋細胞がどんどん増えてしまったのも、受容体RAGEのせいです。

 このRAGEは体中の細胞の一つひとつすべてにあって、鍵穴のようにAGEをくっつけます。そしてAGEが細胞のRAGEにとりつくと、とりついた細胞に対してはもちろん、その周囲に対しても悪質な攻撃を仕掛けることになるのです。


 もっとも、RAGEはAGEをくっつけるために生まれたものではありません。人間がまだ胎児のころ、神経の細胞が発達、分化する過程で重要な役割を果していた受容体です。どの細胞にもRAGEがあり、アンフォテリンというタンパク質と結びつきながら、主に神経細胞を増やしていきました。
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