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不安のしずめ方 人生に疲れきる前に読む心理学
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『不安のしずめ方 人生に疲れきる前に読む心理学』
[著]加藤諦三 [発行]PHP研究所


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人が自分の悪口を言っていないか不安だ



 人は、様々なよくないことを予期して不安になる。

 自分の弱点を意識している人は、その弱点が人目にさらされるのではないかといつも(おび)えている。弱点がばれたらどうしようかといつも不安である。

 人と会うときに、相手から悪く思われないかと不安になる。また、いやな目に()うのではないかと不安になる。

 自分の立場や考え方を主張したあと、出しゃばりと思われたのではないかと不安になる。

 自分がなにかを隠しているとき、人前に出るとそれを見破られるのではないかと不安である。

 仲間が自分のことをどう思っているか不安である。

 日常生活での不安をあげていけばきりがない。

 失敗をして人に笑われないか不安である。人に認めてもらえないのではないかと不安である。人が自分の悪口を言っていないかと不安である。自分の評判が悪くならないかと不安である。

 若い女性は、パーティーに行っても、誰からもダンスに誘われないのではないかと不安である。

 学生は、明日の試験が良くできないのではないかと不安である。

 学校を卒業して新しい会社に入っても不安である。

 上司から仕事を言われても、「この仕事が自分にはできるだろうか?」と不安になる。そうなると仕事に専念できなくなる。これからやる仕事に集中できなくなる。

 会議に出席する。そして会議が終わった後、皆が自分を重要な人間と思ってくれたかどうかと不安になる。しゃべりすぎて嫌われなかったかと不安になる。

 部下は上司に気に入ってもらえるか不安である。自分の能力にも不安がある。

 部下を昇進させる権限をすべて上司が握っているとする。そうなると自分は上司に気に入られているかどうか不安である。上司に嫌われていないかと不安である。

 上司が不安でないかというと、上司は上司で不安である。責任ある立場につけば、毎日不安で不安でたまらない。

 昇進したビジネスパーソンが昇進うつ病などに陥るのは不安だからである。

 明日の仕事がうまくいかなかったらどうしようと不安である。仕事はスケジュール通りいくだろうかと不安である。

 不安なビジネスパーソンは、明日の仕事が心配で眠れない。
「明日の仕事が失敗しても自分は殺されるわけではない」と言い聞かせても不安は消えない。

 仕事に失敗して、人の信用を失うかもしれないと不安である。


仮面の奥の「実際の自分」がばれたらどうしよう



 新しい恋人とデートをする。別れた後で、自分が恋人に好印象を与えたかどうか不安である。

 相手の愛を確信できなくて不安になる人は、好かれよう好かれようと努力しながら、しつこくなって、結果として嫌われてしまう。

 長いつきあいの恋人でも、二人の仲が少しでもギクシャクすると、恋人が自分を愛してくれているかどうか不安になる。

 デートをして別れた後、あんなことを話題にしたから、(ひん)が悪いと思われて嫌われるのではないかと不安になる。

 食事中にあんなことをしたから、軽蔑(けいべつ)されたのではないかと不安になる。

 人間は、自分の価値が(おびや)かされると不安になる。

 また、人は見捨てられる状況で不安を感じる。

 見捨てられるかもしれないと不安になるのは、人が皆(さび)しいからである。

 いわゆる「良い子」は親の前で不安である。それは、自分の言動で親がいきなり怒り出すからである。親の機嫌がいいときでも、いつ怒り出すかと不安である。

 従順が身についた、いわゆる「良い子」は、大人になってからも、なにをするにも人の許可を得ようとする。いちいち他人の許可を得る必要もない些細(ささい)なことまで許可を得ようとする。許可を得ないと不安なのである。

 不安なのは「良い子」ばかりではない。悪いことをしている人も不安である。

 会社で経理をごまかし、ギャンブルに使ってしまった。いつばれるかわからないと不安である。

 学生時代にカンニングをして試験をやり過ごし、なんとか卒業したが、会社に入ってからもなんとなく不安である。どこか自信がない。

 極端に言えば、替え玉を使って入学試験、卒業試験をクリアしてきたような生き方をしてきた人々も不安である。

 実際の自分より自分を良く見せてしまった者はいつも不安である。

 仮面の奥の「実際の自分」がばれたらどうしようと不安である。


毎日の不安で、少しずつ人生を消耗していく


「期待不安」という言葉がある。あることで失敗すると、次に同じような場面でまた失敗するのではないかと不安になることである。

 人前で赤面してしゃべれないということが一度あると、次に人前に出るとき、出る前から、赤面してあがってしゃべれなくなるのではないかと思って不安になる。

 これが「期待不安」である。

 そういう人は、今に生きないで、先を予測しすぎて不安になっている。

 ここに書いてきたこれらの不安は、主として自分の価値が脅かされるときに感じる不安である。

 それ以外にも私たちは、将来の不安、未知の不安に怯える。

 日本人はよく人見知りをするといわれる。あるいは外面(そとづら)がいいといわれる。

 この人見知りも、外面の良さも、見知らぬものへの恐怖と不安である。

 その不安や恐怖から、自分の必要性を犠牲にして迎合する。

 自分の価値が脅かされる不安であれ、未知の不安であれ、自分の存在が脅かされる不安であれ、人はあれやこれやで毎日が不安である。

 なにがあってもまったく平気だという人はいない。

 人はそうした不安で消耗(しようもう)し、人生に喜びを感じなくなる。

 人は毎日の不安で少しずつ消耗していく。そして、やがて肉体的に疲れていても、心理的には不安で、夜は眠れなくなる。最後にはうつになったり、無気力になったり、とじこもって人を(うら)んだり、反社会的行動に走ったりする。

 こうして、たった一度の自分の人生を挫折させていく。

 本書は、なぜ私たちがこのような不安を抱くことになるのか、原因を考え、この不安にどう対処したらいいかを考えた。

 本書は人生の危機管理の本である。
「人間は、危機状況に遭遇(そうぐう)したときの処理能力の点で、大いに異なっている(1)」、そしてそれは「厳密にいえば心理的問題である」という。その処理能力を高める努力は、生きていくうえで大切である。それを考えたのが本書である。
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