『子どもを救う・守る・死なせない☆必須教科書 『いじめ』は2学期からひどくなる!』
[著]佳川奈未
[発行]ゴマブックス
「必読お願い」のまえがき
“いじめを見逃さない! 子どもを見捨てない!”
~ほんとうは、「解決策」がないのではなく、
「解決したい! と、本気で取り組む人」がいないだけ
当時ひどい「いじめのニュース」がとびこんできたときの衝撃といったらありませんでした。やられていた子が受けていたという、「自殺の練習」「葬式ごっこ」「死んだハチを食べさせられる」などの“ひどい暴力”を知ったとき、わたしの体はわなわなと怒りで震えて、おさまりませんでした。遂には、大切な尊い命が失われたのですから。
とてもじゃないけれど、他人ごとではありませんでした。
それは、まさに、うちの息子が中学校2年生のときに受けていたいじめと、そっくりだったからです!
「また、こんな残酷なことが起こってしまったなんて!」
「いつになったら、いじめはこの世の中からなくなるのか!」
そう思うと、「許せない!」という誰にぶつけていいかわからない怒りと、「やられていた子は、こんな酷いことをされ続け、誰にも言えないまま地獄のような日々の中にいて、どんなに苦しく辛かったことだろう」と、胸が張りさけそうでした。
そして、わたし自身、自分がもっと早くにいじめに関する「解決のための本」(つまり、この本)を書いていればと、悔やまれてなりませんでした。
そうすれば、もしかしたら、その本を多くの人々の手にとってもらえることで、いじめへの理解と救済が、学校をはじめ、世の中全体にもっと広がったかもしれないと。
うちの息子は、自殺に追いやられる前に、殺される前に、幸いにも助け出せました。が、いじめのひどい暴力によって心と体に受けた傷は、いまも消えるものではありません。息子の脳に異変が現われたのもいじめによる頭への暴力が続いた直後からで、あれから十数年経ち30代になったいまでも、息子は定期的に検査と治療を受けているのですから。
わたしが息子をいじめ地獄から救い出せたのは、わたし自身が、小学校の5年生、6年生と、2年間にわたって、陰湿ないじめを受けていた経験からくる直感と、息子が発していた「無言のサイン」をキャッチできたからです。
いじめられている子は、誰でも、必ず、「無言のサイン」を発しています。そのサインをキャッチしたときから、解決への道がひらかれるのです!
■いじめられている子の無言のサインをキャッチする!
覚えておきたいことは、いじめられている子は、誰も皆、「無言のサイン」を発している! ということです。逆に、いじめられている子で、このサインを発していない子などいません!
そのことを私は、親、兄弟姉妹、学校の先生、同じクラスの生徒たちやまわりの仲間や大人たち全員に知っておいてほしいのです。
小さな異変に気づくことでこそ、大難は小難に、小難は無難にでき、早い段階で子どもをいじめ地獄から救ってあげられるのですから!
たとえ本人がなにも語らずとも、そのサインはすべて、「顔」「表情」「体」「態度」「服装」「持ち物」「食欲の変化」「言動」「生活習慣」に、しっかり現われています!
なにも言わないからと言って、「なにもなかったんだ」「気のせいだったのかも」と、その子を見捨てないでください!!
本人は、言わないのではなく、「決して言えない!」理由があって、言えないのです!
「助けて!!」「僕を救って!」「お母さん、先生、僕は学校に行きたくない、いじめられているんだ!」と、もし、すべてを告白できたなら、どんなに楽だったことでしょう。
では、なぜ、「決して言えない!」のか? どうして、自ら助けを求められないのか? それについては本文でしっかりお伝えします。
本人が決して誰にも言えない理由、いじめがなくならない本当の理由、行われている残酷な実態と卑劣なしくみをちゃんと理解しない限り、親も先生もまわりの人も、ニュースをちょっとかじっただけの人も、いじめで自殺に追いやられる子の事情は本当には理解できませんし、いじめを解決できません!
それゆえ、「なぜ、先生に言わないんだ」「友達に相談すればいいのに」「どうして親に本当のことを言えないんだ」とか、「いやなら逃げればいいのに」「弱いからそんなことになるんだ」などと、そういったまちがった解釈と、責めるような言葉を言ってしまうことになるのです。
これらの言葉が出てくる人は、決して、本当の実態を知らないものです。
実態がわかれば、「誰にもなにも言えないことは当然であり、大人が助けずに、ほうっておいたら、そのままいじめ地獄は続くだけだ」「自殺に追いやられるか、殺されるしかなくなるのは、こういうことだったのか!」ということが、はっきりわかります!
覚えておいてほしいことは、いじめは、けんかではないということです。そして、“なにもしない子が一方的にえじきにされる”というところに恐怖があるのです。
ですから、いじめられている子の精神が弱いとか強いとか、そういう次元の話ではないのです!
■残酷にも、いじめている子は、いじめることを楽しんでいる!
いじめは、「いじめたい」という子たちによって、故意に行われるものだから、たちが悪いのです。
しかも、やりたい放題するために、「相手を完全に無抵抗にしておいて、逃げようがない八方塞がりな状況をつくりながら、精神的に追い詰め、罠をしかけながらなされる悪魔の行為」ですから、どんなに強い心を持った人間でも、ターゲットにされたら最後、地獄の底まで突き落とされるのです。
いじめのニュースのたびに、こんな言葉を聞くことがあります。
「最近の子は、人の心の痛みをわからないから、いじめをするんだよね」と。
しかし、いじめに対して、もっと的確な表現をするとしたら、こうです!
いじめは、「人の痛みがわからない子」がするのではなく、それをわかって、「おもしろがって人を痛めつける子」によって、積極的に行われる気晴らしのゲームという悲劇です!
その証拠に、過去にいじめられていた人の証言を聞いたり、わたし自身のいじめ体験や息子の告白によると、いじめている子が“笑いながらそれをしている”という現実があることが、はっきりわかります!
ここで、いろんなことをお伝えするより、さっそく本文を読んでいただいたほうが、救いがみつかることでしょう!
本文では、わたし自身がいじめられた体験や、息子が受けたいじめ、そして、解決について、順を追ってお伝えしています。
いじめられているサインをキャッチしたあと、どうすればいいのか、担任や学校へ相談にいくタイミング、いじめの事実を認めようとしない担任や学校への対応、どの段階で警察の協力をもらうのか、そして、自由に学校へ行ける平和を取り戻すために大切なことを書いています。
読んでいただく中には、もしかしたら、胸が痛くて、読む気がしなくなるページがあるかもしれません。わたしも泣きながら書いていました。
泣きながらでもそれを書いた理由は、悲惨なエピソードでも、伝えなくては、いじめに関する解決のヒントがしっかりとは伝えきれないと思ったからです。
この原稿を書いているいまも、どこかの学校で、水面下で、陰湿で残酷ないじめが行われ、なにも悪くない子が傷つけられ、痛めつけられてはいないかと思うと、いてもたってもいられません。
とにかく、この世の中から、いじめがなくなってほしいというのが切なる願いです! なにも悪くない子が、もう、これ以上、悲しんだり、苦しんだり、痛めつけられたり、大切な命を落としたりしてほしくありません! 早く対応できたら救えたはずの命を失いたくありません。
子どもも、親も、先生も、安心していられる愛と光と平和とあたたかい優しさに満ちた学校づくりが、いますぐにでもなされることを切に祈ります。
2012年 7月 子どもを守りたい親として
佳川 奈未