世界で一番むずかしいことばは、スペインとフランスの国境にある少数民族のことば、バスク語であるとされています。一体日本語は、このバスク語の次あたりにむずかしいことばではないでしょうか。
世の中には、厄介なことに、むずかしさと美しさが裏腹の関係で同居していることが多いのです。たとえば、美人になることは大変むずかしい。けれども世の女性はみんな美人になりたくてこのむずかしい作業に時間と金銭をかけて挑んでいるわけです。それと同じように、日本語はむずかしいが故に美しく、美しいが故にむずかしいといえるのではないでしょうか。
日本語はむずかしいからといって日本語を敬遠するのは、美人になることがむずかしいからといって美人になることを辞退したり放棄するようなものです。むずかしいからこそ美しいのであって、むずかしさを避けて通れば終生美しいことばにめぐりあえないのではないでしょうか。