今は故人となられた、元朝日麦酒社長の山本為三郎氏は、私にとって恩人といっていい方だが、助けて下さったり、指導してくださったり、さまざまの厚誼に浴したものの、当然のことながら、大変きびしい鞭も振われた方でした。
鞭と花束――そんなことばも浮かんでくるほど、氏は私にとって、きびしい方であったのです。二十代から三十代の前半にかけての私は、そんなきびしい鞭に悲鳴をあげかけ、時に、愚かにも何度か氏から背を向けて、その鞭の音から逃れたいという思いもしたのでした。会えば、ガミガミと文句ばかりいわれる氏、そこまできびしくいわれなくともと時に反抗する私――。
ところがある日のことです。氏の駒沢のお宅へ伺い、例によってお説教を受けている最中に、財界の巨頭であるY氏が見えました。