粋
イキを漢字で書くと、粋、その語源は生・息・行・意気で、イキということばの基礎には「生きる」というバイタリティがまずなければならない。「生」は「イキ」の基礎的条件で、「息」はこの「生きる」ための生理的条件だといえる。
「心意気」が「相手へ『行く』」ことであり「意気方よし」が「行きかた善し」であるように、「行」は「意気」と同義である。息が肉体的な生き方を物語るように、意気は精神的な生き方を示すことばである。だからこの四つのことばは、四つともイキの語源をあらわし、この四つを、お団子のように串刺しにすれば「イキ」ということばの真のすがたになるといってもよかろう。
イキを外国語でいうとどうなるか。多く、スマートということばがこれに当てられている。しかし、スマートは即ちイキではない。洗練とか瀟洒とかいった意味のリファインということばも当てられている。その他、シックとか、ダンディとか……。けれどもどのことばもぴったりしない。
イキとは畢竟わが民族の独自の「生き」かたのひとつではあるまいか。
九鬼周造博士に『いきの構造』という単行本がある。それによると、「いき」とは垢抜けして(諦=執着を離脱した無関心)、張のある(意気地)、色っぽさ(媚態)の総称である由。
ダテ、イナセ、イサミ、デンポウ(伝法)などに通じる男または女の気品、風格、気概の一形容ということになる。