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生き方・教養
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民俗のことば

『言葉のおしゃれ』
[著]楠本憲吉 [発行]PHP研究所


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 着だおれ

 京都の町できものを商うひとは、「漁場で魚を売るほどむずかしい」といわれた。

 京は着だおれの町である。京のなかで親類がいたとするとそのうちの一軒は染めか織りの仕事をしている家といってよい。京友禅、西陣織を染めあげ、織りあげる町である。

 それに京はおけいこごと、芸ごとのさかんな町で、京のひとは伝統芸に対して感覚的にすぐれているといってよい。

 それに京は年中行事の多い土地柄である。十二月十三日の「事始め」に始まり、お正月の神詣で、挨拶まわりの晴れ姿をはじめ、二月の節分は髪を結って厄除けまいり、ひなの節句には尼門跡さまも女の子のつどいの中心、四月は花見の宴、都をどり、鴨川をどり、五月は賀茂の葵祭、六月は宇治、七月は園祭、八月はお盆の大文字、秋の紅葉狩、十月の時代祭、十二月は南座の顔見世……といった具合に晴れ着を着るチャンスが多かった。

 京では女の子が十三歳になると、初めて本裁ちのきものを着せられる。「十三詣り」といって、桜の咲きはじめる頃、嵯峨の虚空蔵さんへ参詣する。七五三よりもこのときに良い振袖を作る。四つ身裁ちから一人前の本裁ちの着物になるわけ。成人式にはじめて晴れ着を着るよりも早く晴れ着に馴染むわけである。

 それに山でかこまれた京の水は、中性で染色に理想的であったわけだ。幾多の名井もあって、茶事もさかんになったのである。

 園祭は中京、下京の呉服ものの中心地が氏子である。従ってそのパレードは染織品のそれといえよう。


 食いだおれ

 京の着だおれに対し、大阪の食いだおれということばがある。

 京の人は衣服に凝り、大阪では飲食におごって、ともに身代の倒れることをいうわけ。古来、上方は海の幸、山の幸、野の幸に恵まれていて材料も豊富、かつ、その種類もバラエティに富んでいた。それに大阪人気質として、
「きたなく儲けてきれいにつかう」

 という生活観があり、盛り場や、キタやミナミの飲食街はつねに活気を呈していた。

 大阪ミナミの心斎橋、道堀は“食いだおれ”の街にふさわしく、飲食店の多いこと。そのほとんどがイチゲンさん相手の大衆店であるから、銀座よりはるかに親しみの湧く町と感じるのだろう。

赤い灯青い灯 道堀の

 川面にあつまる恋の灯に

 なんでカフエが忘らりょか


 の歌で名高い道堀川は、水こそドス黒く淀んでいるけれど、近年、両岸に緑地ベルトが整備され、一段と美装を施された。この道堀左岸は、パリのセーヌ左岸のように、ぐっと庶民的な町筋で、大アミューズメントセンターを形成しているのである。そしてそれを取り囲むようにして、食堂、料理屋が立ち並んでいるさまも、食いだおれの街、大阪にふさわしい風景となっている。
「食堂くいだおれ」「食堂ビル道」「かに道楽」「道堀会館」「いづもや」「たこ梅」……。

 松竹座と中座の中間にある「食堂くいだおれ」は、七階建ての食堂ビルで、今や、店頭にすえた客寄せの機械人形のチンドン屋とともに大阪の名物のひとつになっている。

 大きな模型のカニをビルの壁に取りつけ、その足を電気仕掛けで動かして客を引くのが「かに道楽」。文字通りカニ料理が看板の店で、山陰あたりから大量の松葉ガニを冷凍で取り寄せて大衆的な値段で食べさせる。
「いづもや」はうなぎの老舗。明治十八年の創業という。
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