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第四次産業革命 − ロボット、AIであなたの生活、仕事はこう変わる −
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人文・科学
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はじめに

『第四次産業革命 − ロボット、AIであなたの生活、仕事はこう変わる −』
[著]西村康稔 [発行]ワニブックス


読了目安時間:8分
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 今年5月の連休に会議と視察で米国を回り、旅の最終地にシリコンバレーを選びました。わずか一日半の滞在でしたが、ここ数年で最も刺激的で、最も楽しいひと時でした。


 シリコンバレーでは次から次へと新しいものが生まれています。例えば「スシリトー」。これは日本食の「スシ」とメキシカンの「ブリトー」を組み合わせた恵方巻のようなものですが、「ヘルシー」と評判で、店には行列ができていました。グーグルの自動運転車も街のあちこちで見かけました。多少スピードは遅いものの、走行する姿に異和感はありません。ドローンもどんどん進化しており、ブレスレット型の超小型のものが、まもなく発売されるといいます。普段はブレスレットのように手首につけるのですが、はずせば超小型のドローンとなります。カメラを搭載しており、自律飛行するため、宙に浮かせて、写真やビデオを自撮りすることもできるのです。また、アマゾンの「エコー」は水筒ぐらいの大きさで、話しかければ、様々な質問に答えたり、音楽を流してくれたりします。天気、歴史的事実、世界各国の人口なども、百科事典やスマートフォンに代わって教えてくれるので、いまでは小学生が宿題をするのに重宝しているそうです。電気自動車テスラの最新モデルXは車庫入れを無人で行ってくれるし、縦列駐車も全自動で楽ちんです。また、毎週のようにソフトウェアがアップデートされます。自動運転機能さえもソフトウェアのアップデートで付与される驚きの仕組みです。一定の速度以下に設定しておけば、前を走る車との車間距離を保ちながら、スピードを上げたり下げたりするのを自動で行ってくれます。



 何故、シリコンバレーでは、このようなイノベーションが次々と進むのでしょうか。私はその理由を次のように考えます。


 第一に、言うまでもありませんが、何よりも「失敗を恐れない気風」が挙げられます。テスラにしても、安全性には細心の注意を払っていると思いますが、その他のソフトウェアはバグ(不具合)も結構あるといいます。完璧な商品でなくとも世に出し、むしろ、消費者がバグを見つけ、オープンな環境で、消費者を巻き込みながら、商品を世に出した後に、だんだんと完全なものに仕上げていくという発想です。この点、テスラに出資にしているトヨタとテスラの共同開発の車「RAV4」について、興味深い話を聞きました。RAV4を世に出すにあたって、そのバグを完璧に処理した上で発表したいトヨタと、発表のスピードを重視するテスラとの間で、議論があったそうなのです。結局、RAV4の発表後にいくつかのバグが見つかりましたが、トヨタには苦情が寄せられた一方で、テスラには、ほとんど苦情が届かなかったそうです。


 このエピソードは、重要な示唆を含んでいると思います。トヨタに代表される日本のモノづくりには、高品質に基づく、高い信頼性とブランド力があります。一方で、多少粗削りでも、次から次へと新しいものを世に問うテスラのようなシリコンバレーの企業は、そのチャレンジングな姿勢とスピードが支持を得ているのです。日本企業のモノづくりの品質に対し、消費者の期待値は高く、不具合があればクレームに直結しますが、シリコンバレーの企業の品質に対してクレームが起こりにくいのは、「不具合があっても(ベンチャー企業ゆえに)そのチャレンジ精神を評価し、多少のことは許す」という文化が根付いているからではないでしょうか。


 安定感、信頼感はあっても、消費者の目は厳しく、不具合が大きなクレームになりやすい日本企業は、トラブルにつながるリスクを回避することを最優先にしようとするため、チャレンジできず、動きに早さが出せないのです。


 この現状を、日本企業はどう打開すればよいのでしょうか。


 私のアイデアの一つは、別ブランドで新製品を出すというものです。日本のブランドの信頼性を傷つけることなく、例えば、シリコンバレー発で新ブランドを売り出すことも一案ではないでしょうか。



 シリコンバレーでイノベーションが進む第二の理由は「多様性」です。シリコンバレーの多くの方々からある種の不満を聞きました。AIやIoTについて、多くの日本企業が視察にくるものの、どの企業も4050代の男性数人でやってきて(担当役員、部長、課長といったところでしょうか)、どの企業も同じような質問ばかりして帰って行くというのです。女性も外国人もおらず、若い人もいない。しかも、帰ったあと、何の反応、提案もない。これではがっかりするのも無理はないでしょう。シリコンバレーの企業は、多様な人材が、様々な新しい視点からの問いかけ、提案を待っているのです。



 しかし、何も悲観的になる必要はありません。こうした中でも、日本企業への期待感は根強いものがあります。トヨタはシリコンバレーに、AIの研究所(TRI)を設置し、所長にDARPA(米国防総省高等研究計画局)のギル・プラット氏の就任を決めました。伝えられているところによると、プラット氏はグーグルをはじめ多くの企業から様々な好条件での誘いもあったそうですが、トヨタを選びました。その理由は「自分はアルゴリズムの世界では誰にも負けない。だからこそモノづくりNo1の企業と組みたかった」ということだそうです。日本企業は、シリコンバレーにないものを持っているのです。すなわち、Win‐Winの関係を築けるのです。ただし、TRIの場合も、給与体系は、トヨタ本社のものとはまったく別次元のものになります。ある意味で企業内「特区」のような位置づけで、給与体系も別々にし、世界中の優秀な人材を集めるようにしているのです。


 こうした動きは、三菱重工業をはじめ、いくつかの企業で始まっているといいます。日本企業の新たな試みによりイノベーションが進むことを期待したいと思います。



 第三に「新たな働き方」が挙げられます。グーグルの社員は働く時間の20%は自分の好きなことを行っていいとされているそうです。中には100%好きなことをやってもいい社員もいると言います。ある意味で優秀な人材が他社に移らないための工夫でもあるのでしょうが、常に新しいこと、今の会社でやっていないことに目を向けているのです。日本でもロート製薬などこうした柔軟な働き方への萌芽が始まっていますが、新たな商品開発や社内ベンチャーを生み出すためにも、働き方改革が必要です。



 以上、変化のスピードが極めて速い時代に、安定感があるが躍動感に欠ける、日本の大企業のこれまでのやり方では対応が難しくなっているのが現実です。企業内「特区」、別ブランドによる挑戦、兼業の容認などを通じて、多様な人材を確保し、イノベーションを推進することが急務ではないでしょうか。高品質な日本のモノづくりへの信頼感の維持と両立しながら、大胆なイノベーションを生み出す取組みが急がれます。



 本書ではIoT、ロボット、ビッグデータ、人工知能(AI)といった斬新な技術革新による、いわゆる第四次産業革命を俯瞰しながら、フィンテック(金融と新たな技術革新の融合)や、さらにその先のブロックチェーンと呼ばれる革新的な技術が広がる中で、今後、日本の経済、社会が取り組まなければならない課題を浮き彫りにしました。



 また、働き方も大きく変わるものと考えられます。20年後には、今の仕事の約半分はなくなると予想されており、単純な定型的な仕事は、どんどんコンピュータやロボットに置き換わっていきます。そして、単純労働だけではなく、検索などホワイトカラーの事務も取って換わられるのです。一方で、コンピュータ、ロボットをうまく使いこなせば、生産性が高まり、所得も増えるはずです。


 こうした未来の働き方についても真剣に考えていかなければなりません。


 技術はどんどん進化し、コンピュータが人間の能力を超えるか(シンギュラリティ)、あるいはコンピュータが感情を持つようになるのか、など将来何が起こるかわからないことも多く、本書ですべて答えが出ているわけではありませんが、読者の皆さんが今後の生活や仕事をする上で、本書が少しでもヒントになればと、できる限りわかり易く書いたつもりです。



 ところで、私にとって、妻と二人で深夜に映画を観に行ったり、ネットフリックスで過去見逃した名作を観るなど、映画鑑賞は最大のリフレッシュ法なのですが、ここ数年、人工知能やロボットの映画が増えています。そうした中から、特に印象に残ったものをコラムで紹介しています。未来を考えるヒントは、こうした映画の中にもあるかもしれないのです。ものすごく忙しい方は、この「はじめに」と映画紹介をはじめとする「コラム」を読んで頂ければ(さらに、もう少し時間のある方は、これらの映画を観てもらえれば)、大きな方向性だけはつかんで頂けると思います。


2016年8月4日 自民党人工知能未来社会経済戦略本部幹事長

衆議院議員 西村康稔

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