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蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた? − 初の女性首相候補、ネット世論で別れた明暗 −
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政治・社会
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都知事選の前から驚嘆させられた小池氏の演出力

『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた? − 初の女性首相候補、ネット世論で別れた明暗 −』
[著]新田哲史 [発行]ワニブックス


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 2016年7月6日、私は41歳の誕生日の朝を都心の産院で迎えていた。


 個室での入院だったため、家族がひとりだけ泊まり込むことが許されている。私は第一子の出産を無事に終えた妻に付き添っていた。


 目を覚ました直後、私のiPhoneにSNSのメッセージが入っていたのに気づいた。

「誕生日おめでとうございます。新田さん、電話をいただけますか?」


 懇意にしている国会議員だ。電話を掛け直す前に、私は用件を察した。これはその翌週に告示を控えていた東京都知事選挙のことに違いない、と。


 そして、その日から私は、初めての子育てをしながら傍観者として見守るはずだった首都決戦の当事者となる。ネット時代に劇場化した都知事選において壮絶な様を目撃することになるプロローグに過ぎなかった。


 ……と、思わせぶりに書いてみたが、「当事者」といっても、とある陣営の選挙準備のごく一端をお手伝いしたに過ぎない。ただ、準備を終えた後も本業の空き時間にボランティアとして事務所に何度か出入りはしていたので、厳密には第三者ではない。


 準備期間のNDA(秘密保持契約)があるので詳細は申し上げられない。アゴラの業務とは完全に切り離しステークホルダー間の合意は取っての関係性ではあるが(私は選挙期間中、特定の陣営を応援する記事は書いていない)、これから都知事選のことを書いていく上で私の立ち位置を最低限開示しておくことが読者に誠実と判断した次第だ。


 さて、都知事選に至る政界の動きを振り返ろう。


 舛添要一氏が6月15日、政治資金を巡るスキャンダルにより、任期途中で都知事の座を辞する意向を表明し、21日に正式に辞職。都知事選が参院選直後の7月14日告示、31日投開票という日程が決まり、政界やメディアでは「ポスト舛添」が誰になるのか、さまざまな候補者の名前が上がった。


 当初、本命視されたのは「櫻井パパ」こと、嵐の櫻井翔氏の父、桜井俊総務事務次官。折しも任期満了による退官の時期が重なったが、本人は記者会見で出馬を否定し、結局出馬することはなかった。一方の野党サイドは、民進党で蓮舫氏の都知事転身に期待する声が浮上。このことが二重国籍疑惑の「端緒」になったことは先述した通りだが、国政に残ることを表明し、こちらも不出馬となった。

「本命」候補が次々に消え、参院選に突入した最中、自民党の小池百合子衆議院議員が突然、都知事選出馬の意向を表明する。蓮舫氏の不出馬会見から11日後の6月29日だった。「崖から飛び降りる」という決意の文句は、マスコミの話題をさらい、環境相時代の「クールビズ」を思わせるキャッチコピー能力の健在ぶりを感じさせたが、この出馬表明が寝耳に水だった自民党東京都連は反発する。


 小池氏は7月6日に正式に出馬表明し、①都議会の冒頭解散②都政の利権追及チームの設立③舛添問題の第三者委員会設置──という3つの公約を掲げる。都議会の冒頭解散は都議会の不信任決議があってから知事が判断する話なので現実味がなく、準備に粗さがあったのは否めなかったが、自民党都連の怒りは頂点に達し、対決機運を盛り上げ、都知事選を劇場化する効果は十二分だった。


 桜井氏の出馬が消えた自民党都連は、元総務大臣で、前岩手県知事の増田寛也氏に打診。小池氏の「崖から飛び降りる」に対抗し、増田氏が出馬について「スカイツリーから飛び降りるくらいの覚悟が必要」と報道陣に心境を語ったことがテレビでは面白く取り上げられた。自民党は久々に都知事選を分裂選挙で迎えることになる。


 一方の野党サイドも、民進党都連が元経産官僚の古賀茂明氏の擁立に動いたり、市民グループが後押しする宇都宮健児氏が出馬をギリギリまで模索するなど紆余曲折あったが、結局、民進党、共産党などが鳥越俊太郎氏を野党統一候補として擁立。参院選終盤の頃には、首都決戦の構図が、小池、増田、鳥越の3氏を軸に展開することが固まりつつあった。


 水面下で都知事選の準備をしていた私だが、その頃の見立てとしては、小池氏が対決機運を盛り上げようとして目立っていたものの、政党の後ろ盾が無く、彼女が狙っている無党派層の受け皿となれるかどうか、まだ計りかねていた。「小池氏は女性に人気が無い」という評価が以前から政界でささやかれており、都知事選当選ラインの200万票を彼女が組織ゼロから掘り起こせるのか半信半疑だった。


 だが、7月14日の告示を待たずして、小池氏のPR巧者ぶりを見せつけられる瞬間がやってくる。


 7月10日午後8時過ぎ。参院選の投票が終わった直後だった。


 自民党本部の玄関口のフロアは、人の出入りをチェック中の報道陣ですでにごった返している。そこに小池氏が突然現れ、党本部1階の都連事務局を訪れたのだ。


 たちまち取り囲んできた報道陣に「推薦取り下げをお願いした」と小池氏。この時点で、都連の擁立する増田氏は正式に出馬表明をしていないが、「これからの戦いで推薦をちょうだいするのは、なかなか難しい」と、その理由を語った(出典:産経ニュース7月10日)。


 私が舌を巻いたのは、この登場の仕方だ。

「推薦の取り下げ」は、一般社会の通念でみればなんの変哲もないキャンセル行為だが、政党は意中の候補者にしか推薦を出さないわけで、わざわざ、取り下げのために都連事務局を訪れる必要はない。これはテレビの前に自分をさらし、都連とのたもとを分かつ自分の決意を都民に示すための「画(え)作り」にしか見えなかった。


 組織の後ろ盾がない小池氏にとっては露出機会を増やす狙いもあったろう。キャスター出身で、テレビの特性を熟知した小池氏ならではの発想とパフォーマンスに「そこまでやるか」という凄みを覚えた。

「小池百合子を中心にものすごい空中戦が繰り広げられていく」──。知人の参院選候補者の事務所のテレビで、自民党本部の様子を見ながら、私は予感した。だが、そのあとに目撃することになるメディア選挙の様相は、都知事選の歴史を研究してきた私にとっても、かつて見たことのないものになる。

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