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最強の組織をつくる 野村メソッド
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はじめに

『最強の組織をつくる 野村メソッド』
[著]野村克也 [発行]彩図社


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 2016年シーズンが始まる前、12球団の監督の顔ぶれを見て、いささか不安になった。


 というのも、セ・リーグ6球団のうち5人が外野手出身監督で、パ・リーグも日本ハムの栗山英樹が外野手出身。つまり12球団のうち半分が外野手出身監督だったからである。


 しかも、セ・リーグもパ・リーグも、日本ハムと広島という外野手出身監督が指揮するチームが優勝した。これはプロ野球がセ・パ2リーグ制になって以降、初めての珍事である。珍事という皮肉を込めた表現をしたのは、私は以前から「外野手出身に名監督なし」と主張してきたからだ。その理由については本書を読んでいただくとして、要するに、私は外野手出身監督を信用していないのである。


 実際のところ、日本ハム・栗山英樹、広島・緒方孝市の両監督の日本シリーズにおける采配には見るべきものはなかった。前進守備のセオリー無視、終盤の守備固めの怠り、バント守備の拙さ、サインの見落とし、走塁ミス、無駄な四球……。ミスが目立つ大味な試合内容で、どちらかと言えば、ミスが少ない日本ハムが勝ったわけである。


 さらに、日本シリーズではキャッチャー対決の妙味、醍醐味を堪能させてほしいと願っていたが、日本ハムの大野(しょう)()、市川友也、広島の石原慶幸、曾澤翼のリードに短期決戦ならではの創意工夫は感じられなかった。


 残念ながら、近年のプロ野球の監督とキャッチャーの人材難は深刻だ。


 今、12球団で名将、知将と呼べる監督はいるだろうか。侍ジャパンの正捕手にふさわしいキャッチャーはいるだろうか。私はどちらも名前を挙げることができない。


 いやはや、のっけからボヤキの連発になってしまったが、日本ハム、広島のリーグ優勝については高く評価している点もある。


 まず、両チームとも、資金力にものを言わせて選手をかき集めるのではなく、スカウティングと育成によってチームを強化してきた。


 今シーズン、広島躍進の原動力となった若手野手はいずれもドラフト1位のエリートではない。田中広輔は3位、菊池涼介は2位、丸佳浩は3位、鈴木誠也は2位。いずれも打つだけでなく、守備力、走力にも優れ、素材の良さを感じさせる。


 ピッチャー陣ではクローザーを務めた中崎翔太が6位である。


 こうした無名だが、将来性や潜在能力の高い選手を発掘してくる目の確かさが広島スカウト陣の素晴らしいところである。選手を育成するノウハウもあるようだ。


 この点は日本ハムも同様で、西川(はる)()、近藤健介、中島卓也ら若手野手はいずれもドラフト1位ではない。やはり攻守走三拍子そろったプレーヤーばかりだ。日本ハムには大谷翔平や中田翔など指名重複や交渉困難が予想される選手にも、リスク覚悟で獲得しにいく思い切ったドラフト戦略もある。


 今や球団の心臓部は編成部にあると言っていい。編成部がしっかり機能し、勝つための戦力を供給しているという点で両チームとも高く評価したい。


 もう一つ、両チームには求心力のある中心選手がいた。


 広島の場合はエースの黒田博樹だ。メジャー球団からの20億円オファーを蹴って古巣に戻った“男気”もさることながら、メジャーで得た経験を現役選手のままチームに持ち帰ったことに意味がある。練習法、配球、球種、マウンドでの態度など、後輩は彼に学ぶことが多かったのではないか。その存在の大きさは後輩たちの精神的な支柱となったはずだ。


 日本ハムの場合は大谷翔平である。規格外の二刀流で話題をさらい、今やプロ野球ファンでなくてもその名を知られる。イチロー、松井秀喜以来のスーパースターだ。優勝を決めた大一番、クライマックスシリーズでの快投などを見ると、自分がチームを牽引するのだという自覚も芽生えてきた。大谷が投げて、打つ姿を見るファンが球場に集まれば集まるほど、他の選手にも好影響を与える。プロ野球は人気商売だ。見られることで選手は成長していく。


 もとより「中心なき組織は機能しない」というのは私の持論の一つであり、黒田、大谷はまさにそれを証明してくれた。


 さて、前置きが長くなったが、何を言いたかったかと言えば、組織が強くなるには強くなるだけの明確な理由があるということだ。優勝するチームには優勝に至った要因があり、優勝を逃したチームには優勝に至らなかった厳然とした要因がある。


 そこを検証し、見極め、次につなげることができなければ常勝軍団となることはまず不可能だ。優れた選手を揃え、勢いだけで優勝することはあっても、Aクラスの常連となり、何度もリーグ優勝や日本一を達成するようなチームをつくることはできない。


 野球ではしばしばチームを称して「戦う集団」という表現が使われる。しかし、戦うために人が集まっただけでは少しも強くはならない。チームは「戦う組織」となって初めて強くなったと言えるのだ。


 組織という言葉を辞書で調べると、「特定の目的を達成するために、諸個人および諸集団に専門分化された役割を与え、その活動を統合・調整する仕組み」とある。


 いささか理屈っぽい説明だが、私は、ただの人の集まりでしかない集団に対して、組織とは同じ目的を共有し、それを実現するために確かな指揮命令系統の下、自分の役割を認識した者同士が協力し、コミュニケーションが円滑に行われる有機体だと考えている。


 その意味では野球とビジネスはよく似ているのかもしれない。


 評論家時代、私は数多くの企業で講演を行った。もちろん私はビジネスの専門的なことなど何もわからないから、野球で知り得た知識や経験を話すしかなかった。それでも多くのビジネス人に「面白い」「仕事の現場でも応用できることがたくさんある」「人間関係にも生かせそうだ」と評価していただいた。


 私自身もこの時期に野球関係者以外の方と話すことで多くを学んだ。一見、野球に関係ないビジネス書から中国の古典までさまざまな本も読んだ。実は、それがヤクルトの監督に就任してから大いに役立った。組織づくりのヒントはいたるところにあり、私の9年間の評論家生活は、いかにすれば強い組織をつくることができるかを学んだ時期でもあった。


 監督になってからも、強い組織をつくるために試行錯誤し、無い知恵を絞って、懸命に考え続けた。組織づくりと人づくりは私自身の生涯のテーマでもある。


 本書は私なりに60年を越える野球生活の中でつかんだ、組織のつくり方、人のつくり方の極意である。あえて記憶に残りやすい言葉で構成した野球人・野村克也のエキスでもあるのだが、名言、(しん)(げん)などと固く考えず、私のボヤキだと思って読んでいただいても構わない。

「言霊」などと言われるように、言葉には不思議な力がある。ボヤキだとしても、その言葉が耳に残れば、案外、人の行動は左右されるものだ。私の言葉を手掛かりに、ビジネスやスポーツにおける組織と人のあり方について考えていただけたら、これ以上嬉しいことはない。

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