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ことばのセンス
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生き方・教養
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まえがき

『ことばのセンス』
[著]楠本憲吉 [発行]PHP研究所


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 PHP研究所から、言葉に関する本を出すのは、これで三冊目である。


 一冊目が『言葉のおしゃれ』(昭和四十九年六月二十日刊)、二冊目が対談集『日本語の愉しみ』(昭和五十三年九月三十日刊)が前二著である。二冊目は出したばかりだが、一冊目は次々と版を重ねることが出来て筆者冥利に尽きる本だと思っている。


 私が言葉に深い関心を持ち、強い興味を覚えるようになったのは、何といっても俳句の道に携わっているからだと思う。


 俳句は言葉を知らないと作れない。少なくともボキャブラリーを豊富にすることが俳句上達の大きな要因になっている。だから俳人は常に言葉に対して貪欲でなければならない。音楽家が音に対して貪欲であり、画家が色彩に対して貪欲であるように――。


 私は常に一冊の薄い手帳を携行している。


 私はこれを「言葉のスケッチブック」とよんでいる。


 新聞、雑誌、週刊誌、あるいは町を歩いていても、旅に出ても、ラジオを聞いても、テレビを見ても、人と対話していても、これはと思う言葉に出会うと早速、その言葉をノートにスケッチしておくのである。


 そして画家がスケッチブックを基にして一枚の画を仕上げていくように、私は私の言葉のスケッチブックを基にして、じっくりと一句ものしていくわけである。


 この習慣を身につけてもう三十年くらいになろうか。私はしみじみよかったと思う。


 そして幸せにも私の身辺に、言葉に造詣の深い諸先輩や友人に恵まれてきた。たとえば、池田弥三郎先生、山本健吉氏などから私はどれだけ学恩を蒙ったか分からない。


 折に触れ、あるいは求められるままに、私は、これまで言葉に関するエッセーや随筆を随分と書いてきた。


 物を書くということは、自分の経験を認識にまで高める作業である。


 せっせと書いていく間に私は私なりの言語観、言葉に対するセンス、言葉にアプローチする方法などをおぼろげながら摑むことが出来てきた。


 今回の本書の刊行は、私の言葉ノートの、ホップからステップへ移行するものと、ひそかに自負している。


 勿論、ステップ、ジャンプを行なうための過程に過ぎない。


 本書を刊行することによって一応のけじめをつけ、次のジャンプへのために、一層の努力と精進あるのみとひそかに期しもしている。


 そして、本書によって言葉への関心を持たれ、言葉に興味をお持ちになる方が一人でも殖えれば、どんなに幸せなことかと思う。


 さきの対談集で、池田弥三郎・岩淵悦太郎・金田一春彦・見坊豪紀・杉森久英・W・A・グロータースの諸卿兄に接し、“日本語の知性”の深さ、豊かさ、厳しさを今更のように思い知らされた。


 この対談によって私が得たものの大きさにははかり知れぬものがあるといっても、過言ではない。


 さて、言葉のセンスだが、「巧言令色鮮キガ仁」の言葉通り、多ければいいというものではない。一言多いために失敗することもある。


 言葉の吟味こそ大切だと思う。そして適確にTPOを弁えること。


 そんな考え方を軸として、今回の原稿の大半を書き下してみた。


 言葉を考えてみようと思う人、関心を示す人、興味を持つ人、少しでも学んでみたいと思う人に、読んでいただくために――。


 言葉の数を誇るよりも、一語一語の言葉の持っている意味の広さと深さ、言葉の持つ機能の領域を知ることが大切で、言葉を生かすことこそ、言葉のセンスを引き出す道につながることと思っている。


 本書には、筆者のそういう考えを展開したつもりである。


楠 本 憲 吉  


電子書籍作品には、現代では使用されなくなった表現や、差別的表現と受け取られかねない表現が使用されている場合もありますが、作品の時代背景や当時の事情を考慮し、かつ作品性を尊重するため、初出をもとに収録しております。作品には差別的意図がないことをご理解いただけますようお願い申し上げます。

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