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ファストフードの恐ろしい話
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エンタメ
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はじめに

『ファストフードの恐ろしい話』
[著]剣崎次郎 [発行]彩図社


読了目安時間:4分
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「剣崎さん、お久しぶりです!」


 先日、とあるファストフード店の前で、元部下に声をかけられた。一緒に働いていた当時は私の部下だった彼も、今ではこの店で店長をしている。いつも疲労感を漂わせてはいたが、笑顔を絶やさない好印象な男だ。

「アイスコーヒーが新しくなって、キャンペーンを行っているんです。おいしくなったんで、ぜひ飲んでみてくださいよ」


 彼はそう言うと、私に小さな紙コップを手渡した。

「本当だ、確かにおいしくなってるね」


 素直に感想を言うと、彼は自信たっぷりの表情で笑った。

「そうでしょう? 昔の味よりも良くなってますよ」

「確かに。昔はマズイのが当たり前だったからなあ」


 そんなやりとりを、店長の隣にいた女子アルバイトは苦笑しながら聞いていたが、店の前を人が通ると、すかさず店員の顔に戻り、笑顔で新しいコーヒーをアピールし始めた。


 彼女の明るく元気な接客ぶりを見て、私はとある出来事を思い出した。


 それは、私がファストフード業界に入ったばかりの頃のことである。


 朝、カウンターに入りレジを打っていると、70代くらいの男性が来店した。彼は毎朝コーヒーを飲みに来てくれる常連客だが、私がレジを担当するのは初めてだった。


 この日も男性はコーヒーを注文し、お会計を済ませた。すると、レシートを差し出す私の顔を見て、突然こう尋ねてきたのだ。

「君、何でこのまずいコーヒーを、私が毎日飲みに来るのか、分かるかね?」

「えっ……。いいえ、分かりません……」


 突然何を言い出すのかと驚いていると、男性は真剣なまなざしを向けて続けた。

「それはだな、店員が笑顔でお会計をしてくれると、どんなにまずいコーヒーでもおいしく感じるからだよ。君がそうやって事務的にお会計をしているのでは、ダメなんだよ」


 この言葉に、私は衝撃を受けた。自社のコーヒーを「まずい」と言われたことがショックなのではない。いつもこの常連客のお会計を担当していた女性店員は、常に元気で明るく、「今日も1日がんばるぞ」という気持ちにさせてくれる子であった。お年を召した常連客の叱咤で、私は自分自身、そしてファストフード店に必要なものを気づかされたのだ。

「笑顔あふれる接客を徹底させよう」


 まだ新人の私は、そう心に誓った。


 だが現実に見る店の裏側は、「笑顔あふれる接客」とはほど遠いものだった。


 私は13年間で大手2チェーンに携わり、本社の業務はもちろん、数多くの店舗運営を経験してきた。そこで見てきたのは笑顔の接客以前の状態で、店員や社員のあまりにモラルが低い姿だった。


 店員は接客中、お客様の目を見ようともしない。来店したお客様に「いらっしゃいませ」の一言もなければ、カウンター前にお客様がいるにもかかわらず、シフト表をチェックしていたりする。自分の勤務時間をとりあえずこなすことしか、考えていないようだった。


 衛生面や調理面でも、信じられないようなことにばかり遭遇した。床に落ちた食材をそのまま使っていたり、賞味期限切れの商品が販売されるのは、もはや当たり前のように行われていたのだ。


 本書では、そんなファストフード業界のエピソードを「事件」「業界の裏側」「店で働く人達」の3章に分けて収録している。現代日本人の食生活の大きなウエイトを占めているファストフード業界に、あるまじき話ばかりである。ちなみに、本書で取り上げる内容はすべて事実を基にしているが、チェーン名や人物名、肩書き等は仮名でお届けする。


 読者の皆様には、普段は足を踏み込むことのできないカウンターの裏側をごゆっくり堪能していただきたい。そして店を利用するお客様の目で、商品が安全なものかどうか、厳しく監視していただければと思う。

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