読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

12/21に全サービスをRenta!に統合します

(2021/12/6 追記)

犬耳書店は2021年12月21日に、姉妹店「Renta!(レンタ)」へ、全サービスを統合いたします。
詳しくはこちらでご確認ください。

0
-1
kiji
0
1
1143384
0
わかりやすい家族への信託
2
0
0
0
0
0
0
くらし
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
はじめに

『わかりやすい家族への信託』
[著]酒井俊行 [発行]すばる舎


読了目安時間:13分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ

「認知症になると財産が凍結されてしまうって、本当ですか?」


 最近、このようなご相談を受ける機会が増えています。「財産が凍結される」とは、どういうことでしょうか。


・認知症になった親の介護費用にするために、親名義の定期預金を使おうと思ったが、解約できなかった。

・認知症の親が老人ホームに入所することになったので、実家を売却しようとしたところ、「今のままでは売却手続ができません」と不動産屋さんに言われた。



 このような例で相談に来られる方は、みなさん同じように「成年後見人(せいねんこうけんにん)をつけるように言われました」とおっしゃいます。


 成年後見人をつけない限り、銀行の定期預金が解約できなかったり、不動産を売却できなかったりすることを「財産が凍結された」と言います。


 このような状態になると、たとえ血のつながった実子でも、認知症になった親に代わって親名義の定期預金を解約したり、不動産を売却して親自身の医療費や介護費用に充てることができないのです。その結果、子が親の介護費用を立て替えて支払うか成年後見人(せいねんこうけんにん)をつけるしか解決する手段がありません。


 こうした、認知症の発症に伴う財産管理の問題が起きることを「認知症リスク」と呼びます


 祖父母や両親が認知症になってしまうことは、本人はもちろん、周りの家族にとっても、とまどいが大きく、とても悲しい出来事です。


 そのうえ家族には、解決しなければならない問題が次々に出てきます。



 誰が介護をする? 施設に入所する契約はどうする? 誰が財産の管理をする? 定期預金を解約するには? 不動産を売却するには? 不動産の管理はどうする? 遺産分割協議をするには? 相続対策をするには? ……



 家族の誰かが認知症になることは、家族全員にとっての大問題です。既に認知症になっていたら、これらの問題を解決するため成年後見制(せいねんこうけんせい)()を利用することになります。


◆認知症になってからでは「成年後見制度」を使うしかない



 成年後見制度は、判断能力が十分でない人に代わり、契約や手続を行う人を決めるものです。「判断能力」とは、売買や贈与といった行為をする際、それが自分にとって有利なのか不利なのか、適正なのか不適正なのかを考える能力のことを言います。


 成年後見制度をわかりやすく言うと、「未成年者に対する保護者」と同じような働きをする人を決める制度です。いわば「成人後の保護者」と考えてもよいでしょう。


 その役割を担う人を「成年後見人」と言います。成年後見人をつけるには家庭裁判所に「成年後見(もうし)()て」をしなければなりません。(→第1章02項●図5)


 家庭裁判所に成年後見申立てをしてから、実際に成年後見人として仕事ができるようになるまで、通常1~2ヵ月くらいはかかります。実際は、申立書の作成や添付する書類の準備期間も必要となりますので、さらに時間がかかってしまいます。


 介護施設に入所するため、親の自宅などの居住用不動産を売ろうとすると、成年後見人が選任された後、別の手続(居住用不動産処分許可の申立て)をして、家庭裁判所の許可を得なければなりません。


 こうなると不動産の売却を考えてからすぐに買い手がついたとしても、実際に実家を売って現金化するまで、半年程度の時間が必要になります。


 こんなに時間がかかると、せっかくいい施設を見つけても、現金が用意できないため、入居できなくなってしまうという結果にもなりかねません。


 なぜこのような手続が必要かというと、成年後見制度は、判断能力が十分でない人を保護するための制度だからです。


 成年後見人は、本人(成年()後見人と言います)に代わって財産を管理したり、本人に必要な福祉サービスの契約などを行います。


 結果として、本人を悪質な訪問販売の被害から守ったり、財産を適切に管理できるようになります。成年後見制度によって本人を法律的に保護し、支えることが可能になるのです。


 成年後見制度には非常に大きなメリットがある一方、成年後見人は本人の財産管理に極めて大きな権限を持つので、国の機関(家庭裁判所)の審理が必要となります。


 そのため実際に選任されるまで、どうしても、それなりの時間がかかってしまうのです。


◆必ずしも家族が成年後見人になれるわけではない



 成年後見人になっても、本人の財産を自由気ままに使えるわけではありません。


 実際は、成年後見人に選任された親族が、本人の財産を私的に流用してしまう事例が発生するようになったため、近年は家庭裁判所が家族以外の人物(司法書士や弁護士など)を成年後見人に選任するケースが増えてきています。


 家庭裁判所に「成年後見申立て」をする際、申立書に成年後見人の候補者を記載する欄があります。


 家族や親族は、自分自身を成年後見人の候補者にできますが、最終的に誰を成年後見人に選出するかを決めるのは家庭裁判所です。


 家庭裁判所は本人の利益を守るために、誰を成年後見人にするのがよいかを総合的に考えて選任します。家庭裁判所が誰を選任しても、親族は「不服申立て」ができませんし、一度、「成年後見申立て」をすると、途中で申立てを取り下げることもできません。(申立ての取り下げをするには家庭裁判所の許可が必要となります)


 家族以外の人物が成年後見人に選任された場合、家族外の人と協力しながら家族の問題を解決していかなければならないのです。


 実際に家族が成年後見人に選任されても、成年後見制度は本人の財産を守るための制度ですので、本人名義の不動産や株を適切な時期に売却して積極的に運用したり、更地に新しく建物を建築して、財産を有効に活用することはできなくなります


 このような理由から、成年後見制度の利用にためらいを感じる人もいるようです。


 しかし認知症になり、判断能力が十分でなくなってしまうと、成年後見制度を利用するほかないのが現状です。


 認知症になることなく、自分の財産を自分で管理できるのに越したことはありませんが、誰でも認知症になるリスクを抱えています。そのため、認知症に備えて事前にしっかりとした対策をしておくことが重要になるのです。


◆亡くなった後の相続対策とは別に、認知症になる前の財産管理対策が必要



 最近では、相続対策として、


①相続の発生に備えて新たに不動産を購入する

②銀行から借入をして更地にアパートを建てる

③遺言書を作る


という方々が増えています。しかしこれらの相続対策では、認知症の財産管理対策にならないばかりか、反対に「認知症リスク」を増やしている可能性もあります。


 従来の相続対策の中で認知症の財産管理対策になるのは、基本的に「生前贈(せいぜんぞう)()」だけです。


 親が生きているうちに不動産を子に贈与しておけば、もはやその不動産は、親の財産ではありませんので、親が認知症になった後でも、子は自由に不動産を管理、処分(売却)できます。


 ただしこの場合、不動産は既に子の財産になっていますから、贈与された不動産を、いつ、どう処分するかは原則的に子の自由ですので、親の制約を受けることはありません。


 生前贈与ではなく、相続対策として①や②のように新たに親名義の不動産を増やした場合、本人が認知症になった時、売却が難しい財産を増やしてしまうので、結果として「認知症リスク」を増大させることになります。


 ③の遺言書については、作成した人が亡くなった時に効力を発生するものですから、生前の「認知症リスク」には対応できません。


 このように、今までの相続対策は、自分が死んだ後のことを考えて行うものでしたから、認知症のような自分が生きている間のリスクには対応できませんでした。


 この問題について、本書を通じてみなさんと一緒に考えたい。「家族の問題を家族の力で乗り越える」、そんな解決方法をご紹介したいと思います。


◆家族信託とは



 実は、認知症の財産管理対策と相続対策の両方に効果を発揮する、新しい財産管理の方法があります。それが、「家族信託」です。家族信託は、信頼できる家族に自分の財産を託して管理、処分してもらう方法です。


 家族信託の対象となる財産は、不動産、動産(現金・商品・家財など)、自動車、株式、債権、特許権を含む知的財産権など多種にわたりますが、よく信託財産にされるのは、


・現金

・不動産

・自分が経営する会社の株式(会社の経営権)



 などです。家族信託は馴染みのない方法かもしれませんが、数年後には認知症の財産管理対策や普通の人にとっても相続対策の中心になる可能性すらあります。


 詳しくは本書の中で紹介しますが、家族信託では次のことが可能になります。


①認知症になっても財産を柔軟に活用できる

②死亡後、財産を誰に承継させるかを指定できる



 家族信託を利用すれば、認知症になっても、成年後見制度ではできなかった財産の柔軟な活用が可能になります。


 例えば、認知症の親に代わって不動産を管理することができます。不動産の売却や更地の上に新たな建物を建築することも可能です。


 自宅を売却する場合でも、成年後見制度と違って家庭裁判所の許可がいらないので、時機を逸することなく財産を活用できるのです。


 認知症になる前に、あらかじめ家族信託で手当をしておけば、預金の解約手続に頭を悩ませることもありません。


 また、今までのような遺言を利用した相続対策では「自分の財産を、どの子に承継させるか」ということまでしか指定できませんでした。遺言による相続では、次の承継先を指定できても、次の次の承継先まで指定するのは不可能なのです。


 家族信託なら、次の次の承継先まで指定できるので、「どの子に承継させた後に、どの孫に承継させるか」ということまであらかじめ決めておけるのです。

「自分が死亡した後には、子がいない長男に。その長男が死亡した後は、次男の子である孫に」といった方法で財産を承継させられます。


 こうすることで、子がいない長男が相続した財産が最終的に長男の妻の親族に相続(長男の妻の相続人は、長男の妻の実親や兄弟姉妹)され、家族の財産が他家に流出するのを防ぐこともでき、今までの相続対策では不可能だったことまで可能になるのです。


 そのため、家族信託を「相続対策のイノベーション」と呼んでいる人たちもいます。


◆家族信託を導入するタイミングは?



 認知症対策にも相続対策にも使える家族信託ですが、導入するにあたり、注意しなければならない点が二つあります。


①判断能力が十分あるうちに導入すること

②財産を託せる、信頼できる家族がいて家族の理解を得られること



 せっかく家族信託を使おうと思っても、既に認知症によって判断能力が十分でない場合には利用することができません。


 その代わり、元気なうちに一度、家族信託を導入してしまえば、元気な時も認知症になった時も、死亡した後でも、効果を発揮してくれます。


 家族信託は、財産を託せる、信頼できる家族(親族)がいることが大前提です。


 したがって家族信託を導入するには、まだまだ元気なうちに、家族の協力を得ながら導入する必要があります。家族信託を利用するには、


・どの財産を信託し、何を目的とするのか。

・誰に財産を託すのか。

・いつまで財産を託すのか。

・財産を託す必要がなくなったら、託していた財産を誰に承継させるのか。


など、最初に決めておかなければならないことがたくさんあります。これらをそれぞれの家族の実情に合わせて考える必要があるのです。


 そういった意味では、家族のことを親身になって考えてくれる専門家との出会いも必要になります。では、誰に相談したらよいのでしょうか?


 残念ながら、家族信託だけの専門家はおりませんが、それぞれの分野で家族信託に精通している専門家がいます。例えば、私のような司法書士や、弁護士、税理士、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士などの大きな財産に関わる専門家です。


 ただし専門家の視点のみから、それぞれの家族を既存の方法に当てはめていっても効果的な対策は生まれません。

「家族信託」は万能な方法ではありませんので、時には遺言書や成年後見制度など、ほかの方法を利用しながら、それぞれの家族に最適な解決方法を探していく必要があります。家族の問題を解決する最適な方法が家族信託だということであれば、導入する価値のある方法です。


 さて、今日も、私の事務所に家族信託のご相談をされたいという、一組のご夫婦がいらっしゃいました……。



夫:田中賢一(けんいち)75歳)

・国立大経済学部卒、元銀行マンで現在はリタイア。妻とは27歳の時、社内結婚。

・資産は自宅、定期預金、普通預金、株式、投資信託、親から継承した土地に資産運用のためのアパート2棟(サカイ司法書士事務所とは登記上で付き合いがあった)を保有。

・お金のことについては一般的な人よりは詳しいが「家族信託」については聞いたことがある程度。

・家は長男が継ぐべきだと考えてきたが、家族信託の話を家族と進めるうち、自分の意思と家族の気持ちが違うことがわかり、家族の気持ちを考えて進めるべきだと気づく。


妻:田中(ひさ)()73歳)

・私立大英文科卒、銀行に勤めて25歳で社内結婚後、結婚を機に退職。以来専業主婦。資産は普通預金のみ。家族を大事に考える人で、誰とも穏やかに仲良くできるタイプ。

・趣味の油絵や手芸に造詣が深く、内面的な豊かさを多分に持っている人。家庭内は常にセンスのいいインテリアで芸術的な雰囲気を保ち、家族の心の安らぎにもなっている。


長男:田中(ゆう)()45歳)

・私立大芸術学部卒。卒業後雑誌社に勤めるが2年で退職。学生時代から通っていたヨーロッパへ移り、風景写真を撮って暮らすようになる。妻子なし。資産は普通預金のみ。

・家を継ぐということは考えていないが、家族と断絶したいと思っているわけではない。

・ここまで海外で1人、懸命に生きて仕事や人脈をつないできた努力を捨てて、日本に帰国するのは、自分の人生そのものを否定される気がする。

・生涯仕事は続けるつもりだし、財産については父親のものなので、好きに使えばいいし、あてにはしていない。弟が継いだほうがいいのではないかというのが本音。


次男:田中(こう)()43歳)

・私立大経済学部卒。食品メーカーの宣伝部門に勤める会社員。資産は自分名義の持ち家(3LDKのマンション・ローン支払い中)と普通預金。

・学生時代は仲間とバンドを組むなど、仲間と愉快に過ごすのが好きだった。妻とはバンド仲間を通じて知り合い、交際後結婚。お金や相続に関してはほとんど知識はない。


次男の妻:田中(よう)()40歳)

・私立大文学部卒。ホテルのブライダルコーディネーターをしている。資産は普通預金、定期預金のみ。

・友人の紹介で夫と知り合い、交際を始める。家庭では仕切り屋ではなく、くつろいで過ごすのが好き。

・公務員の両親に育てられたが、生活力や家計についても興味関心は高く、お金に対してはきっちり考えるタイプ。ただし知識がそれほどあるわけではない。


孫:田中(たか)()15歳)中学3年生 田中家次男・幸司の長男。


孫:田中 泉(いずみ)13歳)中学1年生 田中家次男・幸司の長女。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:0文字/本文:6252文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次