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(2021/11/26 追記)

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詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

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わかりやすい家族への信託
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【01】認知症になると、銀行から貯金が引き出せないってホントですか?

『わかりやすい家族への信託』
[著]酒井俊行 [発行]すばる舎


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◆認知症は身近な病気



 今や認知症は、誰もが(かか)る可能性がある身近な病気です。


 日本全国の認知症患者数は2012年では462万人で、65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症患者ということになります。(内閣府「平成28年版 高齢社会白書」)


 これが、2025年には約700万人に増加することが見込まれていますので、65歳以上の5人に1人が認知症患者ということになります(同)。


 ちなみに、5人に1人という割合は、日本人の国民病とも言われるガンの死亡率(男性で4人に1人。女性で6人に1人)と同程度です。(国立がん研究センター「最新がん統計」2016年)


 高齢化社会が進むにつれて、認知症の問題は、避けては通れない問題となってきています。


◆なぜ認知症と財産管理に注目するのか



 高齢になって介護が必要になると、本人も家族も生活上の困難を抱えることになります。財産管理の面から見ると、身体的機能の低下より、認知症で精神的機能が十分でなくなることのほうが、より大きな問題を引き起こします。


 認知症で判断能力が低下してしまうと、必要もないのに数十万円もする物品を購入したり、数百万円のリフォーム工事を契約してしまったりするなど、悪質な訪問販売の被害に遭うケースも見られます。


 詐欺被害で大事な財産を(だま)し取られてしまうことがあるばかりでなく、毎日の生活や、日常的な財産の管理処分にも影響を及ぼします。


 認知症で本人の判断能力が低下したり、意思確認ができなかったりすると、「法律行為」ができません。法律行為とは契約を締結したり解約することです。


 具体的には、本人が認知症になって判断能力が低下すると、次のようなことができなくなります。


◆認知症になると困ること① 銀行から預金をおろせない



 昨今、銀行や郵便局など金融機関の窓口で何らかの手続をしようとすると、厳密な本人確認が行われますので、家族であっても、本人に代わって窓口で手続をすることが難しくなってきています。


 本人から「委任状」をもらっていたとしても、電話で本人に内容確認をしてからでないと手続をしてもらえないことがあります。


 例えば、認知症の親の生活費に使うために、親名義の銀行口座からお金を引き出すような場合を考えてみましょう。


 親名義の口座のキャッシュカードを持っており、暗証番号も知っているなら、ATMを利用して、一日の限度額内の金額であれば、普通預金口座からお金を引き出すことはできるかもしれません。


 では、老人ホームの入居一時金として、まとまったお金(数百万円)が必要となった場合はどうでしょう。


 親名義の普通預金口座の残高が少なく、定期預金口座にしかお金が入っていないような場合、定期預金を解約する必要があります。定期預金を解約するにはATMだけで手続を済ませられないため、窓口で手続しなければなりません。


 この時、窓口で家族が定期預金の解約手続をしようとしても、通常、銀行は応じてくれません。解約手続をするには、「名義本人に内容を確認する必要がある」と言われるでしょう。


 いくら「親の介護費用に使うため、親名義の定期預金を解約したい」と言っても、銀行は応じてくれませんので、銀行口座に入っているお金を使うことができなくなってしまいます。


 このように、銀行口座の名義人が認知症になると、必要な時でもお金を使うことができなくなってしまうので、事実上、銀行口座が凍結状態となってしまうのです。


◆認知症になると困ること② 不動産を売却できない



 次に、老人ホームの入居一時金を捻出するために自宅を売却しなければならないようなケースを考えてみます。


 このような場合でも、自宅の名義人(所有者)である親が認知症で判断能力が低下していると、子が代わりに親の自宅を売却することはできません。


 不動産を売却しようとする場合、不動産の所有者である売主が、不動産仲介業者に依頼して、買主を探してもらうのが一般的です。


 無事に買主が見つかり、契約条件に合意が成立すると、売主と買主は売買契約を結びます。


 後日、売主と買主をはじめとする関係者が集まり、司法書士立会いのもと、書類やお金の授受を行い、司法書士が法務局に不動産の名義変更の登記を申請し、不動産が買主の名義に変更されます。


 この手続の中で、不動産仲介業者や司法書士は、売主や買主の本人確認や意思の確認を行います。


 ここで、不動産の所有者である売主が認知症になってしまっていると、本人の意思確認ができず、不動産を売却することができないのです。


◆認知症になると困ること③ 不動産の管理ができない



 アパートの大家さんが認知症になった場合を考えてみます。


 認知症で判断能力が低下すると、法律行為として新しく契約をすることができません。


 そうすると、空室になっている部屋を借りたいという人から申し込みがあっても、新たに賃貸借契約を結べないので、空室を貸して家賃収入を得られなくなってしまいます。


 老朽化したアパートの修繕をするために工事を依頼しようとしても、工事業者と請負契約を締結できないので、アパートの修繕ができません。


 もし、何ヵ月も家賃を滞納している借主がいる場合、通常であれば、裁判所に訴訟を提起して、未払いの家賃を回収したり、貸している部屋を明け渡してもらう方法があります。


 ところが、大家さんが認知症になってしまうと、大家さんを原告として裁判所に訴訟を提起できませんので、滞納された家賃を回収することができないばかりか、部屋を明け渡してもらうことすらできないかもしれません。


 アパートの大家さんが認知症になってしまうと、アパートに関するさまざまな契約や、裁判所を利用した家賃の回収・明け渡しができなくなってしまい、アパートの管理に重大な問題を生じさせる可能性があります。


◆認知症になると困ること④ 遺産分割協議ができず、相続手続が進まない



 相続人の1人が認知症だった場合は、どうでしょう。


 亡くなった人が遺言書を遺していなかった場合、相続財産は民法に規定された割合で分割されますが、実際に相続手続をするにあたって、相続人全員の署名捺印が必要となるケースが多いです。


 例えば、亡くなった人が銀行に自己名義の口座を持っていた場合、銀行は口座の名義人が死亡した事実を確認すると、その死者名義の口座を凍結します。これにより、死者名義の口座からお金を引き出すことができなくなります。


 死者名義の銀行口座からお金を引き出すには、口座の解約手続をする必要がありますが、この手続には相続人全員の署名捺印が必要です。


 銀行所定の書式に相続人全員が署名捺印し、相続人全員で相続人の中から誰がその口座を取得するのかを話し合い(この話し合いのことを「遺産分割協議」と言います)、話し合いの結果を書面(この書面のことを「遺産分割協議書」と言います)にして、相続人全員が署名捺印をしたものを銀行に提出することによって、ようやく口座解約の手続が行えるようになります。


 遺産分割協議も法律行為となりますので、相続人の中に1人でも認知症で判断能力が低下した人がいると、遺産分割協議を行うことができなくなってしまうのです。


 そうなると、銀行口座は凍結したままですから、死者名義の口座からお金を引き出すことはできません。


 遺言書を作っていない場合、例えば、亡くなった父名義の口座に入っていたお金を、認知症の母の介護費用のために、すぐ使うことができなくなってしまうのです。


◆相続対策と認知症の財産管理対策は違う!



 近年、相続対策をされている方が増えてきているようです。「終活」という言葉もよく耳にするようになりました。


 日本公証人連合会によれば「遺言公正証書」の作成件数は、調査期間の10年間で、約7万4000件から約10万5000件へと増加していることがわかります。この件数は遺言公正証書の件数のみですので、公証役場で作成された遺言書に限られたものです。(→図1)


 公証役場には行かず、自分だけで遺言書を作成(これを、「自筆証書遺言」といいます)する人もたくさんいらっしゃいますので、実際の遺言書作成件数は、もっと多いと考えられます。




 日本財団「遺言書に関する調査」(2016年)によれば、遺言書作成理由のトップは「相続争いを避けるため」となっており、相続で家族が争わずにすむように遺言書を作成する方が多いことがうかがえます。


 2015年には相続税法が改正され、基礎控除枠が引き下げられたことにより、改正前であれば相続税がかからなかったケースでも、改正後は相続税がかかるケースが多く発生しています。実際、相続税法改正前の1年間で課税対象となった相続と、改正後1年間で課税対象となった相続(被相続人数)を比べると、ほぼ倍になっていることがわかります。(→図2)




 このような経緯もあって、生前、税理士に相談して、なるべく相続税がかからないように銀行から借入をして不動産を購入するなど、資産の組替えをしたり、生前贈与をするなどの相続対策を行う人が増えてきています。


 しかしながら、ほとんどの相続対策は認知症対策になっていません。なぜなら一般的な相続対策は、相続発生後に困らないような対策(いわゆる争族対策や相続税対策)が目的になっているからです。


 認知症の問題は相続の前に発生するので、一般的な相続対策のほとんどは認知症対策にならないのです。


 たとえ遺言書を作成していたとしても、遺言書は作成した人が死亡した時、はじめて効力を発生するものですので、認知症のように遺言書作成者が死亡する前に発生した問題には対応できません。


 したがって既に相続対策を行っている人でも、新たに認知症対策として相続対策とは別の対策をしておく必要があるのです。


◆認知症になる前に対策することが大事



 実は、認知症になってしまった後では、ほとんどの対策が取れません。


 認知症で判断能力が低下してしまうと、銀行の定期預金を解約したり、不動産の管理や売却をしたり、遺産分割協議のような法律行為ができなくなるのと全く同じように、新しく契約を締結したり、解約できなくなるからです。


 つまり、認知症対策に効果を発揮するような新たな契約(法律行為)が結べなくなってしまうのです。


 認知症になっても困らないようにするには、認知症になる前に、相続対策とは別に何らかの対策をしておかなければなりません。


 これは財産の多い、少ないを問わない問題です。


 財産が多い人だけが認知症対策が必要かと言えば、一概にそうとは言えません。


 むしろ、財産が少ないほうが問題となるケースが多いかもしれません。


 例えば、財産が普通預金のほかに、定期預金に300万円ほどしかないというような場合、介護費用のために定期預金を解約しようとしても、認知症で判断能力が低下してしまうと定期預金を解約できず、すぐに介護費用を捻出することができなくなってしまいます。


 ここまで見てきたように、認知症対策は相続対策とは別に、認知症になる前に対策をしておく必要があります


 でも実は、認知症の財産管理対策になり、相続対策にもなる方法があります。


 それが、「家族信託」です。


 家族信託であれば、認知症対策と相続対策を同時に行えるのです。


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