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明治日本の産業革命遺産
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歴史
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1.世界遺産登録までの道のり

『明治日本の産業革命遺産』
[著]柳澤伊佐男 [発行]ワニブックス


読了目安時間:29分
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当初の提案は別の名で


「明治日本の産業革命遺産」──Sites of Japan's Meiji Industrial Revolution──この名前を私が知ったのは、2013年(平成25年)8月、東京で開かれた会議でした。この会議は、内閣官房の地域活性化統合事務局が開いたもので、産業遺産や世界遺産の専門家などが出席していました。世界遺産の事情に詳しい方は、「おやっ?」と思われるかもしれません。


 というのは、この案件は、当初、文化庁が事務局を務める文化審議会で審議されていたからです。その当時、「産業革命遺産」は、「日本の近代化産業遺産群」という別の名称がついていました。世界遺産の国内候補になったときは、「九州・山口の近代化産業遺産群」という名称でしたので、関係者の間では「(きゅう)(やま)」という略称で呼ばれていました。それがまた別のタイトルで登場したことに、私は少なからず驚きを覚えました。まったく違う案件のように思えたからでした。


文化庁の“公募”


「産業革命遺産」がユネスコの世界文化遺産の候補として名乗りを上げたのは、2006年(平成18年)のことでした。世界遺産への推薦を担当する文化庁は、この年、「世界文化遺産の暫定一覧表の充実をはかる」ためとして、全国の自治体から世界遺産の候補を募集します。「暫定一覧表」とは、いわゆる「暫定リスト」のことです。ユネスコの規定では、各国はこのリストに登録された文化・自然遺産の中から、世界遺産の候補を推薦することになっています。つまり、暫定リストへの登録が認められないと、世界遺産には推薦できないのです。


 この“公募”に対して、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、山口の六つの県と、北九州、(おお)()()(から)()、長崎、(あら)()()()、鹿児島、(はぎ)の八つの市が合同で、「九州・山口の近代化産業遺産群」というタイトルの文化遺産を提案します。これは、九州地方知事会などが中心になってそれぞれの地域にある近代化遺産をひとつにまとめ、世界遺産の登録を目指そうと取り組んでいたものでした。


提案のコンセプト



 この提案のコンセプトは、次のようなものでした。当時の「提案書」から引用します。

「近世末から近代初頭における日本の工業化・近代化は、西洋技術の導入から極めて短期間の内に、他の非西欧諸国に類例をみない飛躍的な発展を遂げており、国内外の研究者から世界史上の奇跡として評価されている。九州・山口は、そうした日本の近代化の主導的な役割を担うとともに、日本の経済発展を支えた基幹産業である製鉄・造船・石炭・紡績などの産業発祥の地であることから、その産業遺産群には特異な価値が見出される」


 幕末から明治時代にかけての短期間に、製鉄・鉄鋼や造船、石炭産業という重工業の分野が急速な発展を遂げ、産業化を達成したことは、世界史的な意義があり、それぞれの地域にある産業遺産がその価値を証明しているというのが提案書の主張でした。このコンセプトは、「明治日本の産業革命遺産」とタイトルが変わってからも変わっていません。


提案は13の資産でスタート



 このコンセプトに沿った産業遺産として、九州・山口地方の六つの県から、あわせて13の施設がリストアップされました。

・福岡県  ①東田第一高炉跡(北九州市)

②三井石炭鉱業株式会社三池炭鉱宮原坑施設(大牟田市)

・佐賀県  ③旧(たか)(とり)家住宅(唐津市)

・長崎県  ④旧グラバー住宅(長崎市)

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